春秋覇王 82 正妃決定 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

さて、その後、ついに健白が正妃を迎えることになった。


なるべく他国を刺激しない結婚ということで、健白、緋剛、黄准が一致して選んだのは、伎の国の姫、秀王の娘であった。


伎の国は王になる前の健白の亡命先であり、その時世話になったのが秀王である。

秀王にとっては、覇王の義父になるというのは名誉なことだし、一方、健白としては恩を返すという意味合いもあった。


そして、何より、伎の国は小国で、争いを好まぬ中立的な国であった。


そのため、勝の国が伎と親密になったとて外交上特に問題はない。勢力地図に影響はないのである。


「まあ、翠の国の快王は悔しがるかもしれませんが」


と緋剛が言うと、


「娘の方は、ほっとするだろう」


と健白が言った。


「ああ…」


と緋剛は顎を撫でて、黄准を見た。

黄准はふたりにニヤニヤ見られて、咳払いした。


「まあ、快王は健白様ご自身と厚い信頼関係を築いているので…その上姻戚関係にならずとも…」


「あ。なに?やっぱり反対なの?翠の姫が俺の妃になるの」


「やっぱりって何ですか」


「背中を流してもらった仲だもんな」


「何それっ⁇」


緋剛が目を丸くした。


「あれ?言ってなかったっけ?翠の国に行ったときにさぁ…」


「言わなくてよろしいっ!」


「俺と間違われてさぁ、ほら、貫禄あるから。俺より」


「いやいや、間違われたんじゃないでしょう!健白様がっ」


「まあ、もういいじゃん。その話は。俺の結婚の話だろ?すぐそうやって自分の話に…」


「持ってってないっ!」


ハハハ…と緋剛は二人のやり取りを見て笑った。



「まあ、とにかく、正妃は伎の国の姫ということで」


と緋剛が言った。



「…うむ」




緋剛は、笑みの消えた健白の横顔をチラッと見やった。


「…健白様」


「ん?」


「それで、進めてよろしいんですね?」


「ああ」



「何か気になることでも?」


「いや…その姫のことがやっぱり思い出せなくて」


「そうですか。健白様が亡命なさったときにはまだ子供でしたからね。しかし、美しい方ですよ。健白様の好みかと」


「なんで俺の好みがわか…」


「……」



一瞬、気まずい空気が流れた。


「緋剛…」


「はい」


「…桃花殿とは、いつ結婚するつもりだ?」


「…健白様の婚礼の儀が終わってからの方が落ち着くかと…」


「そうか」


健白は、しばらく言葉を探していたようだが、やがて口を開いた。


「緋剛…」


「はい」


健白は、まっすぐ緋剛を見た。



「桃花殿をよろしく頼む。幸せにしてやってくれ」



緋剛は、健白を見つめ返し、それから黄准と目を合わせた。


あの晩、健白がやけ酒を飲んだことを黄准から聞いて知っていたからだ。



緋剛は、胸を張って健白を見た。



「お任せ下さい。この緋剛、必ず桃花殿を幸せに致します」