俺は後から条くんと上野さんの荷物を持って、タクシーで病院に向かった。
やはり、アナフィラキシーショックだったようで、
「注射打ってもらって、今やっと治ってきてる」
治療室から条くんが出てきて、そう言った。
「よかった。びっくりしたよ」
「…うん」
「原因は?」
「頭痛薬を飲んだらしいんだけど…」
「ああ」
「それがいつも飲んでるやつらしくて。他の薬と一緒に飲んだわけじゃないし、激しい運動をしたわけでもないのに」
「そんなこともあるんだね。体調によるのかなぁ。怖いな」
「お前さ…」
腕組みした片方の手で顎に触れながら、条くんが、
「…なんかしたわけじゃないよな。あいつに」
って鋭い視線を俺に投げる。
「…え?」
「だっておかしいじゃん。あんななる理由がわかんねーよ。薬はふだん飲んでるやつだし。俺が行ったとき、お前あいつのことハグしようとしてたのか、もうしちゃった後なのか知らねーけど」
「し、してないよ!」
慌てて言うと、いきなり条くんに胸ぐらを掴まれた。
「ふざけんなよっ!」
「じょ…条くん…っ⁇」
「じゃあ何してたっ⁈」
「な、何も…っ」
「……」
条くんは息がかかるほど顔を近づけて、低い声で、
「正直に言わねーと…」
って呟きながら俺を鋭く睨んだ。
「ぶっ殺すぞこらっ‼︎」
つり上がった眉と鋭い瞳の前で、ゆるくウェーブのかかった髪が揺れる。
ああ…まずい。
条くん、無茶苦茶怒ってる。
そりゃそうだ。彼女があんなふうになったんだから。
俺は観念して
「正直に言うよ」
って言うと、条くんが胸ぐらを掴んでいた手を離した。
「でも、信じてもらえないかもしれない」
俺は上目遣いで条くんを見返す。
条くんの彼女なのに、俺に抱きついた上野さんの真意がわからない。
何か理由があったんだろうか。