keep going 20 スパイ | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

毎年この時期になると、決まって応援団の間で揉め事が起こる。

どの団がダンスの振りを真似しただの、曲をかぶせてきただの、衣装のデザインを盗んだだの…。


今年も同じで、ちょうど校長室で卒業アルバムを見た翌日から、団長たちがそんな話をし始めた。


俺の所には、黄団の団長松坂がグリ団と振り付けが酷似していることについて相談しに来た。


「じゃあ、振りを変える?」


「でも、うちがオリジナルなんで、できれば変えたくありません」


「でも、向こうは向こうでうちがオリジナルだって言ってんでしょ?」


条件部屋の前で立ち話していると、向こうから、健くんが歩いてきた。


ふだんは放課後も和装だけど、団練習に参加していたんだろう。大きなロゴのついたTシャツに細身のパンツで、随分若く見える。


髪をかきあげながら颯爽と歩く健くんの後ろから桃団の滝沢団長が小走りでついてきていた。


「いいじゃん。いっそダンスバトルみたいにしちゃえば」


「ええ⁇相手は赤団ですよ?条先生ですよ?」


「だから?」


条件部屋の前で立ち止まった健くんに、

「そっちはどうしたの?」

って聞くと、


「曲が赤団とかぶってんだって」

って答えた。


「しかも、出だしの振り付けは私たちが最初に考えてたのとそっくり同じなんですよ」


ってなぜか俺に訴える滝沢に、健くんが、


「最初のラップのとこだろ?」


「はい。だから、やっぱりあそこはけんちゃん先生が、最前センターでグイグイ行って下さいよ。向こうは条先生なんだから。出だし大事でしょ?ダンスバトルみたいにしちゃえばって言ったの先生ですからね」


「同じ曲なんだからいっそ一緒に踊る?」


「場所足りません!」


「あ、そっか」


「ギュウギュウ詰めで踊るんですかっ」


「いいじゃん。すし詰めダンスバトル。新しくない?」


「やめてくださいっ」


「あはは」


「もう、先生!まじめに考えて下さいよ!」


「やだね。考えるの俺じゃないだろ。君たちの問題」


「にしても、たち悪いですよ赤団は」


「何が」


滝沢はキョロキョロと辺りをうかがうと、急に声をひそめた。



「スパイを送り込んでたんです」


「スパイ⁇」


健くんと俺は、思わず顔を見合わせた。



「うちの団じゃない子が紛れ込んで一緒に踊ってたって情報が入ってるんです」


すると、黄団の松坂が、


「あ!うちも!」


って声を上げた。


「宝先生、うちも団の誰も知らない子が一緒に踊ってたって話が…」


「マジで?」


そのスパイとやらが、髪の長い大人しそうな一年生ということで団長たちの話は一致した。


おそらく…あの子か?






女子高生たちの噂話は早い。


あっというまに、学校の怪談が出来上がってしまった。