さて、一月のある日、都内の某ホテルで、聖ヴィクトリー女子校の新年会が行われた。
新年会も終盤にさしかかったころ、司会の井ノ原校長が(校長自ら司会ってどうなんだよ?)
と盛り上げると、拍手と歓声が起こった。
俺が座っている円卓には二つの空席がある。条件の席だ。
俺が拍手していると、佐久間さんが、
「あれ?宝先生は?カミセン企画なんでしょ?」
って聞いてきた。
「出るよ?」
って答えると、上野さんが、
「着替えてますもんね」
って白いTシャツがパツパツになってる俺の上腕辺りをチラッと見た。
白いTシャツにインディゴブルーのジーンズ。ごつめの革ベルト。という格好で腕組みして舞台に目をやる。
舞台袖で待機してる条件も同じ格好だ。
井ノ原校長が、「カミセンのぉ〜〜ランバダ〜〜ッ‼︎」って紹介すると、会場の照明が落ちて、ランバダの曲が流れ出した。
両サイドから、ピンスポを浴びた条くんと健くんが踊りながら出てきた。
腰を左右に振りながらステップを踏み、中央で手を取り合って、腰を密着させる。
向かい合って同じリズムで腰を振りつつ膝を落としていく。
それから片手を繋いでくるっと健くんをターンさせ、今度は条くんが後ろから健くんを抱くようにして腰をくっつける。
そこでライトがピンクに変わって、ふたりの白いTシャツがピンク色に染まった。
それを合図に俺は席を立って、おもむろに舞台に向かった。
条くんの手が健くんの太ももの脇にあてがわれ、腰に向かって撫で上げられる。
そうして、その手が腰にたどり着いたら、左右の振りが前後に変わった。
俺は腰を振りながらステップを踏んで、そんなふたりの周りを一周する。
一周した後、ターンしてふたりから離れると、健くんがクルクルと回りながら、俺の方に飛び込んでくる。
サッと片手を出して健くんの腰を支えると、健くんが大きく胸をそらせる。
それからバッと勢いよく起き上がり、唇が触れ合う寸前でぴたっと止まる。
健くんの前髪が顔にバラバラと落ちかかる。
そのまま抱き合って一緒に腰を回し、ステップを踏んで左右の太ももを交互に健くんの股の間に入れる。
健くんをターンさせて後ろを向かせ、繋いだ手を健くんの臍のあたりにやって、膝を落とし、健くんのお尻を押すように腰でクイクイッとリズムを刻む。
健くんの首筋をピンクの汗が伝うのが見えた。
やがて、剛くんが健くんの前に来て、腰をくっつけて左右に揺れる。
俺は健くんの脇腹に手をやって健くんのお尻にぴったりくっついて、やはり左右に揺れた。
三人が密着して激しく腰を小刻みに揺らす。
歓声と拍手が起こり、ふと気づくと、井ノ原校長が舞台に上がっていた。
校長も腰を左右に振りながらステップを踏んでいる。
俺たちはそれを見て、踊りながら笑った。
すると、今度は、佐久間さんまで舞台に上がってきた。
若い男性教員たちからおおーっ!というどよめきが起こった。
健くんが一瞬眉をひそめた。