80年代ブームの影響で、ランバダが最近また流行り出したとかいう話題になって…。
佐久間さんが知らないって言ったら、健くんが、
「知らない?そっか。知らないよな。俺もあんま知らないけど、何しろエロいダンス」
「エロいダンス⁇どんなのですか?」
って佐久間さんが目を輝かせ、
「踊ってください!踊ってください!」
って健くんの腕を掴んで揺さぶった。
「踊れるかなぁ…。あ、上野さん、ダンス専門でしょ?知ってる?ランバダ」
「え?し、知ってますけど…///」
条くんが、ジロッと健くんを睨んで、
「セクハラだぞ。健」
って呟いた。
「知ってるかどうか聞いただけじゃん。踊れなんて言ってないでしょ。一言も」
「踊って見せてくださーい!」
って佐久間さんが手を挙げた。
「あ、おまえ、セクハラ」
って健くんが佐久間さんを指差す。
「力関係、逆ですから大丈夫です」
「あのね、力関係が問題になるのは、パワハラ。セクハラはセクシャルなハラスメントだから…」
「踊れよ健」
「は?おまえ、今俺にセクハラっつったその口で…っ」
「見たいなぁ」
って俺も腕組みして健くんを横目で見た。
「でもあれ一人じゃ踊れねーだろ」
って健くんが言うと、
「はいはい!私、お相手します!教えてくれたら一緒に踊ります!」
「いよっ!おふたりさん!」
って条くんが盛り上げる。
「こらこらっ!酔っ払ってんな。条。それこそほんとにセクハラになっちゃうだろっ」
「大丈夫です!」
「大丈夫じゃねーよ。さっきのお前の理屈で言うとだなぁ…」
「大丈夫です!けんちゃん先生ならどんなにセクシャルでも、私、ハラスメントと感じませんから!」
「意味がわからないよ」
健くんが頭を抱えて、
「よし、わかった。じゃあ、踊ろう。はい、条!」
って条くんの肘を引っ張って椅子から立ち上がらせようとした。
「なんで俺なの」
って唇を尖らせる。
「じゃ上野さん」
って健くんが条くんの隣に座ってる上野さんに手を差し出すと、その手を条くんがパシッと掴んだ。
スツールから下りて、逆に健くんを引っ張って少しスペースのある場所に連れて行き、健くんと向かい合った。
「マスター、ミュージック!」
って健くんが言うと、マスターが首を振って苦笑した。
マスターと目が合って、俺が
「ランバダは置いてないって」
って言うと、健くんが剛くんに一歩近づいて、
「♪チャーララララ〜…」
って歌いながら目線を剛くんの腰のベルト辺りに落とした。
剛くんも目線を健くんの腰のあたりに落とした。
シルバーに光るふたりのベルトのバックルが触れ合って、カチャッ…と音がし、ふたりが上目遣いで見つめ合った。