ふたりのパン屋 22 お兄さん | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

店を閉めるところだったけど、その人を招き入れた。


「麦さんのお兄さんなんですか?」


単刀直入だな…朝顔。


その人は目を泳がせて、

「あ…いや…その…」


とごまかそうとする。ビンゴだな。これは。


「お兄さんなんでしょ?5年前から連絡取ってないって麦さん言ってましたよ」


「麦が?」


ほら。呼び捨て。


「やっぱり〜〜!」


朝顔が目を潤ませて足をジタバタさせる。


「似てると思ってたんだよぅ」


って興奮して俺に取り付く。


「お前、俺が『似てない?』って言ったら『そうかなぁ』って言ってたじゃねーかよっ」


「夕顔、早く麦さんに連絡して」


「あ!ちょ…っ!」


ってその人が慌てて俺たちを制する。


「む、麦には、僕が来たこと…言わないでください」



「どうして?」


朝顔がそんなバカなって顔をする。


「その…彼女は…麦は…喜ばないと思うので…」


「喜ばないわけないよ!だってお兄さんなんでしょ?5年も会ってないんでしょ?わざわざ自分を探して会いに来てくれたんでしょ?ねぇ?夕顔」



「いったい…何があったんですか?5年前に。よかったら、話していただけませんか?」


「お話するようなことは、何もありません。ただ、僕は麦が元気でやってるってことを確かめたかっただけです。会いに来たわけじゃありません。…麦の今の生活を乱すようなことは…したくないんです。

どうか…くれぐれも、麦には内緒にしといてください」


俺と朝顔は顔を見合わせた。


「お節介かもしれませんが、僕は以前麦さんに、お兄さんに連絡を取ってせめて元気でやってることくらい伝えたらいいんじゃないかって言ったことがあって…」


お兄さんが、ピクリと眉を上げて俺を見た。


「じゃあ…麦さんはその後もお兄さんに連絡してなかったんですね…」


「失礼ですが、あなたは麦とどういう…」


「あ。いや、あの…なんでもありません。仕事上の付き合いだけですけど…」


「仕事のことは結構相談に乗ってるみたいです。こう見えて案外頼り甲斐があるっていうか、しっかりしてて…イテッ!」


って朝顔が俺につねられた尻を抑えて飛び上がる。


「余計なアピールしなくていいんだって!」


って小声でいさめると、


「アピールじゃないよ。ほんとにそう思ってるから…」


「わかったからもういいって!」


アピールとかでかい声で言うんじゃねーよっ!


「あの…麦のこと…色々親切にしていただいているようで…ありがとうございます」


お兄さんがお辞儀をして、それから棚のハーブティーに目をやった。


「また、あれをもらえますか?あ。すみません。もう店閉めて…」


「ああ、大丈夫です!全然、大丈夫ですよ」


ハーブティーを買って、お兄さんは、くれぐれも麦さんには内緒にしておいてくれと念を押して、帰って行った。


それから数日後のことだった。


麦さんから俺に相談したいことがあると連絡があったのは。