ふたりのパン屋 23 麦の相談 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

麦さんから相談したいことがあると連絡があったその翌日の夕方。



パンが売り切れたので早めに店を閉めて、近所のカフェで麦さんと会った。


お兄さんのことは、麦さんに言うつもりはなかった。内緒にしといて欲しいってあんなに言われたら、言えないよ。



「ごめんなさいね。忙しいのに」


って麦さんがすまなそうに言うから、


「別に忙しくはないよ」


って笑った。


麦さんの話では、駅向こうにいい物件が見つかったらしい。駅に近いし、広さも申し分ない。


ただ、元はブティックだったので、カフェにするには改装費がかかる。それに、店賃自体も予算オーバーだった。


それで一旦は諦めたのだが、この話を教えてくれた大将が不動産屋にかけあって、店賃を安くしてもらえることになりそうだと言う。


おいおい、大将。随分入れ込んでるじゃねーか。

まあ、基本、面倒見のいい人だから、下心があるとは限らないけど。

…いや、どうかな。



「しかもね…そこを見に来てる人が他にもいるらしくて」



「グズグズしてると他に決まっちゃう?」



「そういうことなの」



ふぅむ…。



「よっし」


って俺はカフェの伝票を持って立ち上がった。


麦さんがキョトンとして俺を見上げる。


「見に行こう」


「い、今から?いいの?」


「だって見てみないとわからないでしょ」



ってコートを羽織る。


ボーっと俺を見てる麦さんに、何してんの?行くよ?って感じで、麦さんのコートも取って差し出した。



麦さんがホッとため息をついて、


「ありがとう」


ってコートを受け取る。



「夕顔さんの意見が…聞きたかったの」


小さな声でそう呟いた。




「…あ。…そう」



頭をかきながら麦さんに背を向けて、我知らず頬が緩んだ。


相談はしたかったけど遠慮していたってこと?俺がもう物件の話は大将に任せたと思ってたのかな。

大将の方が俺より顔もきくし、店賃を下げさせる力もあって…

だけど…


『夕顔さんの意見が…聞きたかったの』


やべっ。デレちゃうぜ。

朝顔が言ったとおり、結構頼られてんのかな。俺。