DOMINO 1 雨の夜 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?


彼女は助手席に座って、窓に当たる雨を見ている。

シャワーで濡れた長い髪はまだ乾き切っていない。だが、ノースリーブの肩は、駐車場の灯りを反射して、もうベッドでの温もりを忘れたように冷たく光っている。


「ほんとに帰る?ひどい雨だけど」


彼女の背中に話しかける。


「だから送ってくれるんでしょ?わざわざお友達に車借りて」


彼女が振り向かずに行った。


彼女がどうしても帰るというので、同じマンションの友達に車を借りた。


プライベートで色々世話になってる信頼できる男で、車が必要なときはいつも快く貸してくれる。とはいえ…


「いい迷惑」


彼女が泊まってけばいいだけの話。


「あたしのせい?」


って彼女が振り向く。



「そういうつもりで言ったんじゃない」


いや、むしろ俺のせい。

だってタクシーに乗せればいいだけの話。でも、そうしたくなかったのは俺。



俺はため息をつき、辺りを見回す。



誰もいないことを確認して、ハンドブレーキを外し、ギアをドライブに入れる。

紺のVネックの半袖シャツから覗く腕に血管が走る。手首でシルバーのバングルが光る。


邪魔な前髪をかきあげて前方を見、アクセルを踏んだ。


朝から降り続く雨は夜になって激しくなった。


ワイパーが役に立たないほどの土砂降りだった。


雨で白く煙るフロントガラスに前の車のテールランプが赤く滲む。


「ひっどい雨だな…ほんと」


ってハンドルを両手で握り、ブレーキを踏んだ。前かがみになって顔をしかめる。


助手席の彼女を見て、髪をかきあげる。


彼女は助手席の窓の方を向いたまま、黙っている。


前の車が動き出して、俺はアクセルを踏んだ。



「イヤだって言ったのに…」


彼女の声が雨音にかき消される。


「なに?」


振り向くと、彼女と目が合った。


「あなたがそんな人だと思わなかった」


「そんな人って?車の運転ぐらいできますよ」


「違うわよ。あなたが…」



…俺が?



「健が強引に女を抱くような男だとは思わなかった」