夢小判三人譚 42 次郎吉と夢小判 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

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V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

翌朝。


「さあさあ!みなさん、昨夜の大捕物をご存知かい?

健吉親分がついに鼠小僧を捕まえたと思ったら…なんとお縄にかかったのは…

おや?鼠じゃねえ!こりゃあ鼠より大きいぞ?」


「タヌキだってえ言うんだろ?」


新聞売りの口上に群がる人々の中から、そう声をかけたのは、次郎吉だった。


「なんだい!ネタをバラすんじゃねえや!」



「そりゃすまねえ。お詫びにひとつもらうよ」


「そうこなくちゃ!さあ買った買った!」



次郎吉は、新聞に載っている岡っ引きが狸親父をお縄にかける絵を見てニヤリと笑った。


昨夜次郎吉は、はじめは剛春に言われた通り、小判を盗まずにいようと思っていた。

だが、偶然逃げ込んだある部屋で異国のお宝を見つけたのだ。


自分ではない誰かが床下に隠してあったお宝を暴いたあとであった。


しかもそれらに次郎吉は見覚えがあった。

以前、越後屋に忍び込んだときに見たのと同じ、つまり抜け荷の品々だったのだ。


ははん…。さては、やはり長野様ではなく、老中が裏で抜け荷に関わっていたのだな。


すぐにそう確信した次郎吉は、これで健吉が自分を取り逃がしても御役御免にはならないと悟った。


抜け荷の証拠をあげるという大手柄を立てれば、鼠小僧を取り逃がしたことは大目に見られるだろう。


そこで、遅かれ早かれ健吉がここを見つけるだろうとお宝をそのままにし、当初の計画通り、夢小判を降らせたのだった。


「ちょいとーっ!次郎吉さーん?次郎吉さんはいるかい?」


次郎吉は遠くに自分を探すお丸を見つけて、


「やべっ」


っと人混みに姿を隠す。


「ちょいとーっ!首切るわよいいかげん!まったくお給金上げろって文句ばっかり言って、ちっとも働かないじゃないの!この給料泥棒!同じ泥棒なら鼠小僧の方がうんといい男だわよー!」


お丸の文句を聞きながら、次郎吉はフッと笑った。