夢小判三人譚 38 証拠 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

さて、一方老中田村の屋敷では、またしても鼠小僧を捕り逃がしたと、捕り方の男たちが悔しがって悪態をついていた。



「ちきしょうっ!鼠のやつ」


「しかも今日に限ってまた盛大に降らせやがったな」


「こりゃいよいよ親分の進退があぶねえ」


「お役を解かれるだけですめばいいが…」


「てやんでえ!滅多なこと言うんじゃねえや!」


そこへ、健吉が静かに現れた。




「すみません!親分!俺たちがいたらねえばっかりに…」


健吉は、帯に手をかけて子分たちを見回し、

「なあに。お前たちはよくやった。俺の読みが甘かったのよ」


と言ってねぎらった。



「親分〜〜っ‼︎」


「だけど、親分の十手は?」


健吉は帯から十手を取り出して、目を細めてそれを眺めた。


「親分!」

「親分!」


子分たちは目に涙をためて健吉を見守っている。


「ちょうど潮時よ…。俺の負けだ」


「そんなことありません!次こそきっと捕まえられますよ親分!」


「そうですよ親分!」


「そうだ!俺たちで井ノ原様にお願いして親分をなんとか…」


「よしねえ!」


健吉に一喝されて、男たちはビクッとして、口をつぐんだ。


「そんなこたあ、井ノ原様を困らせるだけよ。余計なことはするんじゃねえ」


健吉はそう言うと、子分たちに背を向けて廊下を歩き出した。


男たちは、健吉の凛々しい後ろ姿を涙ながらに見送った。



健吉は歩きながら、ふと今通り過ぎた小部屋の戸がほんの少しだけ開いているのに気付いた。




そして、立ち止まって数歩戻ると、部屋の戸に手をかけた。


それからスッと戸を引いて、部屋の中を見た。


健吉の眉がピクリと動いた。そして、その目が見開かれた。


健吉はさらに戸を大きく開けて、部屋の中に一歩足を踏み入れた。


見ると、部屋の隅の畳と床板が剥がされていて、四角くくり抜かれた床下に、明らかに異国の物と思われる七珍万宝が詰め込まれていた。


「こ…これは…?」


健吉はしゃがんで、壺や織物や…初めて見る異国の品々を手に取って眺めた。


こいつぁ…ひょっとすると…


「おいっ!」


健吉はサッと立ち上がって開け放した戸の向こうにいる子分たちに声をかけた。


「井ノ原様をお呼びしろッ!」


こいつぁ…きっと、抜け荷の品物に違いねえ…。