って花乃に言われて、俺は照れて肘をつき、指先で額を抑えて俯いた。
「でも、それはお互いさまだよ」
俺を慰めるような花乃の言葉に、
「そうかな…。花乃はお姉さんだったよ」
って指先で額を抑えたまま上目遣いで花乃を見る。
「そうでもないわよ。あの頃の歳の差ってひとつふたつでも随分大きく感じるけど…」
「うん…そうだね」
額から指を離して、腕組みして椅子にもたれた。
目が合うと、花乃がクスッと笑って立ち上がった。
「飲もう!奢っちゃう!」
花乃がワインを取りに行くのを振り返って見る。これ行こう!って棚からいいワインを選んで持って来た。
花乃からワインを受け取って
「え?いいの?」
ってラベルを見る。
「いいのいいの」
って言うから、俺はその上等そうなワインの栓を開けた。
ふたりで思い出話をしながらいい感じに酔ってきたとき、花乃が、
「ねぇ…准くん…」
って首を傾げて甘えるように俺を見た。
「こっち来て」
って空いたソファの隣をポンと叩いた。
ドキッとした。
「いや…///」
って意味もなくワイングラスの脚を持って俯いた。
「おいでよ」
「花乃、酔っ払ってるよ」
って俯いたまま笑って首を横に振る。
「だから?」
…だから?
顔を上げると、花乃が唇を尖らせて俺を見ていた。
その赤い艶やかな唇を見て、初めてディープキスをした相手が花乃だったことを思い出した。
顔が熱いのはワインのせいだ。
「はやくぅ〜」
って花乃が手を伸ばして俺の腕を掴んで揺らした。
「ちょっとちょっと…///」
「おいでおいで」
って引っ張られて、俺は仕方なく、花乃の隣に腰を下ろした。
「じゅーんくん♪」
って花乃が俺の腕に腕を絡めて来たから、
「ダメダメダメ」
って俺は笑いながら腕をほどいた。
「いいじゃん。ケチ〜」
いやいや。完全に酔っ払ってるだろっ。
「あ。すごーい!すごいすごい!なにこれ?かたーい!」
って俺の肩や腕をベタベタ触る。
「こらこらこらっ」
って花乃と距離を取るべく、少しだけ横にずれた。
すると、ふいにベタベタ触っていた手を止めて、花乃が
「大人になったね…」
ってしみじみとつぶやき、俺の腕にすっと腕を絡めた。
……。
なんとなく、その腕を解けなかった。
花乃は今、幸せなんだろうか…。
ふと、そんなことを考えてしまったから。
花乃が俺の肩に頭を預けて、
「好きだった…?」
って呟く。
「あたしのこと…」
付き合ってた頃の気持ちを聞かれているわけだから、当然、好きだったと答えるべきなんだろうけど、
この雰囲気でその言葉を言うのはまずいだろう。きっと。
かといって、返事をしないと、あの頃と同じように花乃を傷つけてしまいそうで…。
「そんなに…好きじゃなかった?女の子なら誰でも-」
「そんなことないよ」
花乃の方は見れなかった。
女の子なら誰でもよかったなんて…
「そんなことない」
広げた脚の間で組んだ手を見て、そう言った。