元彼元カノ 12 ふたりきり | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

聡美が出て行ったあと、花乃は、もう今日は閉店だと言ってシェフを帰し、店を閉めてしまった。



静かな店内にジャズがゆるやかに流れている。


テーブルに灯された小さなキャンドルの向こうでは、聡美ではなく、花乃がケーキをつついていた。



……。




なんで…こんなことになってるんだ…。



聡美もわからないけど、花乃もわからない。



なんか…落ち着かない…。


俺はふたりきりでいる照れ臭さを隠すために、パクパクとケーキを口に運んで、コーヒーをぐっと飲んだ。



「美味しい?」



カップをソーサーに置くと、微笑みながら俺を見る花乃と目が合った。



「准くん、食べ方変わってない」



「そ、そぉ?」



なんか恥ずかしいぞ。やばいな。顔赤くなってないかな。



「ふふっ…。可愛い」


って頬杖をついて俺を見つめる。


その親しげな…いや、俺のうぬぼれじゃなければ愛しげな…かもしれない視線を受け止めかねて、目を逸らしてコーヒーを飲んだ。



もう…完全に、保護者と担任じゃなくなってる気がする。



っていうか、最初から花乃は元彼として見ていたのかな。俺のこと。






ふたりきりでいると、まるで時間が戻ったみたいだ。





「時間が…戻ったみたいね」




って微笑む彼女の笑顔は、高校生の頃、いつも試合の後で俺を迎えてくれたときのままだった。



強がりながら、どれだけ彼女に甘えていたか…。

整理のつかない感情をそのままぶつけたこともあった。



あんなにカッコ悪い俺をよく好きでいてくれたなと思う。



彼女を傷つけたことを謝りそこね、彼女に傷つけられたことは平気なふりをして…


彼女の前に出ると、気持ちと行動がいつもちぐはぐになって…。


それは彼女を好きだったからで、また、彼女の愛を感じたからで…。



昔の青臭い感情を思い出して恥ずかしくなった俺は、花乃をまともに見れなくなった。


それで、カップを置くと、ティースプーンを見つめて指先でいじった。カン…とスプーンがカップに当たった。



「ごめんね…ガキで…」



ポロリとあのとき言いたかった言葉がこぼれてしまった。