※ 最初に言っときます。みなさん、ドラマだからねっ!宝だからね!そして相手は峰不二子(聡美のことだ)だからねっ!
店のドアが開く音に振り向いて彼をみとめた瞬間、胸がキュンとなった。
ビックリ。
ほんとに恋してるじゃない。あたし。元彼に。
今日はスーツじゃない。シンプルだけど、よく見ると編みの凝ったグレーのサマーニットが、さりげなくお洒落で素敵だった。
それに、懇談の時とは違うカジュアルな雰囲気が、またプライベート感が増して…ドキドキしちゃう。
その彼がドアを開けて先に通した女性が…またグラマラスでビックリした。
露出は少ないのにメリハリのある綺麗なボディーラインが色っぽくて、堂々とした佇まいに鮮やかなロイヤルブルーがよく似合っていた。
うーん…なんだろ。そう。峰不二子みたい。こんな体型の日本人っているのね。
嫉妬を通り越して…憧れてしまいそう。
彼の奥さんが(奥さんなのかな?)こんな人で、むしろ良かった。
彼が彼女を従えてしっかりとした足取りでこっちへ来た。
「こんにちは」
少し照れたように笑って、後ろの彼女の方をチラッと見た。
「うちの…」
って口元に手をやって、少し口ごもった。
昔のシャイな彼が蘇る。
「…かみさん…」
……。
か、
か、
かーみーさーんー⁇
(カミセンじゃなくてかみさん⁇)
彼が少し顔を赤くして一歩横に移動すると、彼女が、
「聡美です。彼がいつもお世話になってます」
って、にっこりと微笑んで丁寧にお辞儀をした。
「い…いえ。こちらこそ。鈴木花音の母です。娘がいつもお世話になってます。どうぞこちらへ」
あたふたと挨拶をして、奥の席へ案内した。
彼の口から出た「かみさん」という言葉がグルグルと頭の中で渦巻いていた。