嘘 24 嘘つきのわけ | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

健くんが俺の耳に片手をあてて、ヒソヒソ声で囁く。


「ダーヤマ…」


「ダーヤマ⁇誰それ?」


「体育の山田だよ」


「あ!佐倉さんの担任だった…」


そういえば、上野さんが佐倉さんのことを知ったのも山田先生から話を聞いて…

保健室でひとしきり泣いた上野さんを慰めたことを思い出した。


「男の嫉妬は怖いね〜〜。条と上野さんのデート画像、あれも山田から送られて来たらしいよ」


「は?なんで生徒にそんなことすんの⁇」


「さあ。生徒を使ってさーふたりの仲を壊したかったんじゃないのー?」


「マジで⁇」


「だってそれ以外考えらんないじゃん」


「そんなことするっ⁇」


「お前はしないわな」


「健くんだってしないだろ?」


「しねーよ。当たり前でしょ」


そのとき、カツカツと足音を響かせて、条くんが職員室に戻ってきた。


「お疲れ…」


って微笑みかけたのに…


無視された。


な、なんで?


なんかめちゃくちゃ機嫌悪いんですけど?


俺たちを無視して、電話に向かい、内線をかける。


「もしもし。数学の条だけど。山田いる?」


条くんの険しい声。


「え?なに?…帰った?もう帰ったの?…わかった。…いや、いい。サンキュ」


ガチャン!と、受話器を叩きつける。


「ざけんなっ!仕事もできねーくせに帰んのはえーんだよっ‼︎」


って電話に向かって怒鳴る。俺と健くんは顔を見合わせる。


「まあまあ、条。落ち着いて。もうじき橋本の保護者来るから、そっちの準備先でしょ」


すると、佐久間が入って来て、

「条先生、橋本さんのお母様がおみえです」

って声をかけた。


条くんは、わかったとだけ言って、黙り込んで動かない。


健くんが、ため息をついて、


「佐久間、ちょっと待っててもらって」


って言って佐久間さんを戻し、条くんのそばに寄る。


「まあ、山田は逃げねーし、あとでいいだろ?」


って、条くんの肩を抱いて顔を覗き込む。



「マジムカつく。ふざけんなよ」


条くんはプイと横を向いて健くんと目を合わせない。



「わかったわかった。あとで煮るなり焼くなり好きにしろよ。お前の好きにすればいいから。な?」



ってポンポンと肩を叩く。


「ほんっと、あいつ、やってやる!」


って健くんに見向きもせず、パシッと手のひらに片方の拳をぶつける。



「やるのはいいけど、プライベートでやれよ?」




「あ?」


はじめて健くんの顔を見た。


健くんが顔を近づけて、声をひそめる。


「学校でやっちゃってさー、労災おりたりしたら癪じゃん?」


プッと俺は吹き出す。


条くんも、ニヤリと笑って健くんを上目遣いで見る。


「はい、行った行った!保護者対応お願いしますよ。主任」


って条くんの肩をパンッと叩いて、笑顔で送り出す。


「健くん…。橋本、親には言わないで欲しいって言ってたよね?」


「甘いんだよ」


って健くんが振り返って、席に戻る。


「親に学費出してもらって?食わしてもらってて?親に言うなとかふざけんなよって話」


「いや、それはそうだけど」



「あいつはお母さんに嘘ついてることだって、たくさんあると思うよ?これを機に全部吐き出しちゃえばいいんだよ」



「え?」



「あいつの虚言癖は…」


って健くんが椅子を回してこっちを向き、机に片肘をついて、ボールペンの先で自分のこめかみ辺りをつつく。


「俺の勘だけど、厳しすぎるお母さんとの親子関係が根っこにあんじゃないかな…」



「へーぇ…」


「妹がいるんだってさ。ピアノも勉強もできる妹が。

…自分も親に認められたいけど、ありのままの自分じゃ認めてもらえないから、色々取り繕って誤魔化して…

嘘を重ねてきたのかもしれないな…なーんてね。…わかんないけど」


って言うとまた椅子を回して机に向かい、今日の報告書を書き始めた。