「吐いた吐いた。吐きましたよ。洗いざらい、全部」
俺は首を回し、片手で肩を揉みながら、相談室から職員室に戻り、宝の隣に座った。
今は、保健室で条と上野さんから指導を受けている。
気になる情報の仕入先だが、レイプ未遂の件は、上野さんを騙した佐々木からだった。
「佐々木と繫がりあったんだ」
って右手に包帯を巻いた宝が驚く。
宝は、四階の庇で落ちてきた上野さんを抱き留めたときに、手をケガした。
上野さんはほぼ無傷だったから、たいした男だと同じ男ながら惚れ惚れする。
ま、宝を庇にスタンバイさせたのは俺だけどね。←
「橋本の母親、ピアノ教室の先生なんだって。佐々木がその教室通ってたって」
「へーえ。母親の教え子だったんだ」
「橋本がうちを受験するってんで、先輩にあたる佐々木から、いろいろ話を聞いたりして仲良くなったらしいよ」
ただ、佐々木は、上野さんを自分を助けてくれた恩人として話していたらしく…
「橋本はそれを自分に都合よく話を変えてばらまいたってわけか…」
って宝が腕組みする。
「上野さんを、それを理由に条に交際を迫った嫌な女ってことにして」
「すげーな。…でも佐々木は、実は自分が上野さんを騙したってことは?」
「言うわけないじゃん!たまたまレイプ未遂にあった自分を、たまたま助けてくれたって話だったらしいよ。自分に都合の悪いことは話さないでしょ」
「そっか…。ふぅん…。あ。…で、佐倉さんの話は?」
「あ!あれはさ…なんと…」
って俺は辺りを憚って宝の方に身をかがめる。宝もこっちに体を傾ける。
「な、なに?」