嘘 20 夕闇の中 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

「大丈夫です!」


そう言って、桜は軽やかにフェンスをよじ登りだした。


向こう側に下り、後ろから橋本を自分の体で包むようにして手足を広げて立つ。


俺と橋本の両手の外側で、桜がしっかりフェンスをつかむ。



「橋本さん、あたしがいるから大丈夫。頑張ってよじ登って、条先生の方へ行って?」


橋本が恐る恐る足をフェンスにひっかけてよじ登り出す。


俺は橋本の手が移動するたびに追いかけて、しっかり掴んでやる。


自然とこっちもフェンスによじ登るかたちになって、俺は橋本を凛々しく見上げる桜の顔に視線を落とす。



「もう少しよ!頑張って!」




そのときだった。





橋本が足を踏み外して、体がガクッと一段下がった。


とっさに俺は橋本の手をしっかり掴む。





「キャッ…!」


って桜の声がして、橋本のずり落ちた足に蹴られて…




フェンスを掴んでいた桜の両手が


離れた。






桜の上半身が、何もない夕闇の空に向かって、倒れて行く。



桜が何かにすがりつこうとして手を伸ばす。



その広げた手のひらを掴んでやりたくて、俺は反射的に橋本の手を離そうとした。



だが、離そうとすると逆に橋本にギュッと強く握られて、



振りほどくのが、一瞬遅れた。



桜の足が、足場から離れて、体が宙に浮いた。



桜の体が夕闇に沈んで行く。


嘘だろ…っ⁇




「桜ーーーっ‼︎」



桜が俺の視界から消えた。