嘘 19 もう二度と… | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

守ってやれなかった…。


あいつのこと。


あいつの命…。


俺は、真剣な目で橋本を見据える。


「一歩も…動くんじゃねーぞ…」


注意深くフェンスに近づく。


大丈夫だ。飛び降りたりしない。

こいつにそんな度胸は、ない。


死なせたり、しない。絶対に。


もう二度と…誰も…。





橋本は目に涙を溜めている。


足が震えている。



どんな理由があっても
何を犠牲にしても

俺の生徒を死なせたりしない。


相手はまだ子供だ。



「怖いんだろ?…大丈夫。じっとしてろ。な?」



橋本が恐る恐る下を見ようとする。



「下見るなっ。…俺だけ見てろ…」



こっち向け。そうだ。



「大丈夫だ…。落ち着いて。そのまま…」



橋本の手が小刻みに震え出して、フェンスがカシャカシャと音を立てる。



やべーな…。指が、かじかんできてる。



…もう少し。



橋本が、また下を向こうとして、腕を伸ばす。


上半身が風にあおられるように向こうに傾く。



危ないっ…!




俺はダッと駆け出す。





カシャン…ッ‼︎





フェンスごと橋本の両手をガシッと掴んだ。




ふぅ…と、目を閉じて息を吐き出す。




「ふざけんなよ…マジで。心臓持たねーから…」




俺は目を開けて、橋本の濡れた瞳をまっすぐに見つめ返す。


橋本がガクガク震えて涙を流しながら俺を見つめる。







「付き合ってる奴なんて、いねーよ。いたとしても…お前の命には代えられない」




「せんせぇ…」




「生徒の命を守るためなら…なんだって犠牲にできる…」



その覚悟は…佐倉を失ったとき、決めた。




フェンスごと橋本の手をしっかり掴んで、俺は健に目配せする。



袴姿の健が、


「俺がそっち行くから、条の手離すな」


って言ってフェンスをよじ登ろうとしたとき、





「あたしが行きます!」


って桜が駆け寄る。



「件先生、着物だし。あたし、ジャージだから」



「いや。大丈夫。危ないって」


って健が桜を制した。