嘘 14 揺さぶり | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

橋本がいなくなったと佐久間が慌てて報告に来て、俺と宝は校舎内を探すことになった。


「やっぱり俺がもうちょい詰めりゃ良かったかな…」


走りながら、ひとりごちた。それにしても、袴に草履が走りづらいぜ。


「健くん、西階段の方行って」


「了解」


緊張から解放されたあとで佐久間に優しくしてもらえば、何か溜まってるもんを素直に吐き出せるんじゃないかと思った。


その読みは、半分は当たっていた。


『条先生には、結婚して欲しくない』


と佐久間に言ったらしい。

悪くない糸口だ。


そこから、もっと正直な気持ちを引き出して、


上野さんへの嫉妬だったり、恨みだったり、そういう自分の負の感情を冷静に見つめ直すとこから、あいつは始めなきゃいけない気がした。


それは、人間なら当たり前に抱く感情だ。


だけど、ある程度コントロールできるようにならなきゃいけない。


佐久間には、そういう話ができたはずだ。


上野さんの邪魔が入らなければ。





『なに言ったの?あいつに』


そう条くんに聞かれて、あたしは止むを得ず正直に話した。





橋本さんに、例のツイッターの件を問い詰めた。

教室でそれを見せてくれた生徒は橋本さんの仕業だと言っていた。

そう話しても、橋本さんは、当然、知らない、自分じゃない、の一点張りだった。


ほら、と言わんばかりにスマホでツイッターを見せる。


確かに、そのツイートは消えていた。


いつのまに消したんだろう。誰かがあたしにバレたことを知らせたんだろうか。


あたしに嫉妬して反感を持ってる生徒は、一体どれだけいるのだろう。


こんなふうに橋本さんが強気にあたしを責められるのは、彼女の味方が他にもたくさんいるからだろうか。


条くんと付き合っているというプライベートが、あたしの仕事を侵食していく。


職場恋愛の難しさと、条くんという人の彼女であることの難しさを、あたしは痛感した。


でも、だからって…


条くんを諦めたりできるわけない。


条くんに愛されているというより、

条くんを、心から愛しているという自負が、あたしにはあった。


橋本さんの条くんへの情熱的な愛情は確かに認めるけれど、それは、間違った愛し方だと、あたしは思う。


「条先生のことが好きなのはわかるけど…好きな人に迷惑かけて、いいのかな」


「自分は迷惑かけてないんですか?」


「え?」


「上野先生が別れてあげれば済む話なんじゃないですか?」



付き合ってもいないのにどうして別れるの?

って言葉がすっと出ては来なかった。


彼女の嘘を責める自分が、
嘘をついている。


あたしが彼女を詰めきれないのは、自分も嘘をついてる後ろめたさがあるから?


あたしが正直に付き合っていることを認めれば、ひょっとして彼女も正直に話すのかしら。


でも、そうすれば、条くんとの噂が真実になる。



条くんと…別れる?



まさかそんなこと…。