噂 19 そばにいたい | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?


「俺…疫病神じゃねーかな…」



橋本にアンケートの件を認めさせられなかったその晩、俺は桜のベッドで、そう呟いた。


「え?」

桜が肘をついて起き上がり、俺の顔を覗き込む。


だってお前、俺と付き合ってから、ろくなことねーじゃん。


俺は眉間に皺を寄せて桜を見上げる。


桜がふっと笑う。


「バカね。条くん…」


そう言って、素早く俺の唇にキスをして、


「大好きよ」


って首を傾げた。



なんだかなぁ…。


桜が傷つくたびに、自分も傷ついて、結局慰められてんのはいつも俺の方じゃないかと思う。


桜の前向きさとしなやかさに、いつも救われてる気がする。


沖縄の太陽かデイゴの花みたいに明るい桜…。

だけど、さすがにこたえたんじゃないかな。今回は。



「桜…」


って、長い髪に隠れたうなじを探り当てて引き寄せる。



さっき桜がくれたキスとはまるで違うキスを返す。



結局、平日にもかかわらず、昨日から二晩続けて桜のアパートに泊まり、桜を抱いた。



健にバレたらまた説教されるかもしんねーけど…


そばにいてやりたかったんだ。



言いたいやつには言わせてやるよ。


そして、言ってやるよ。


じゃあお前は、どこまで桜を守る気があんのかって。


所詮、他人の女だろ。


健に桜を守る義理はない。




壁の薄い小さな古いアパートで、隣近所を憚って密やかに愛し合った。


朝、一人暮らしの女の部屋から男が出てくるとこをアパートの住人に見られる気恥ずかしさや、


時間をずらして出勤する煩わしさを超えても、


俺たちは、一緒にいたかったんだ。



いてやりたかったんだ。










翌朝、桜より先に出て、最寄り駅から電車に乗った。

つり革を持って電車に揺られていると、ふいに


「おはようございます」


って声をかけられて、ドキッとした。