運命 15 目を覚まして | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

俺は、立ち上がって鞄から小さな箱を取り出した。


「一周年だからさ…」


さっちゃんの前で少し照れくさかったけど、俺はその箱を開けた。


そこには、真新しいお揃いのリングが光っていた。



「わあ…素敵…」


さっちゃんが横から覗き込んで顔を綻ばせた。


「今のリングはさ、付き合ってたときに俺が買ったやつで…結婚指輪はまだだったから…」


「そうなんだ…」


「ほんとは、ゆかりの意識が戻ったらふたりで一緒に選ぼうって…思ってたんだけど」


俺は自分の薬指に新しいリングをはめた。


「…なかなか目覚まさねーんだもん。待ちくたびれて、買っちゃった。…気に入ってくれるかな」


「絶対気にいるよ」


さっちゃんの温かい気持ちが嬉しかった。


「高かったんだぜ。はい、ゆかり」


そう言って、ゆかりの手を取った。


一年前より細くなった薬指に、リングを通す。



「…きれいだよ。…似合ってる…」



力の入っていない頼りなげな手を持って、表情の無いゆかりの寝顔を見下ろした。





さっちゃんが、ふいに黙って席を立った。


ちょっと…って、鼻声で言って病室を出て行った。



パタン。




夕日が差し込む静かな病室で

さっちゃんがくれた花が

優しくオレンジ色に染まっていた。





俺は、ベッドに肘をつき、両手でリングをはめたゆかりの手を握って、目を閉じた。


そうして、瞼の裏にゆかりの笑顔を浮かべる。


俺を包み込むような柔らかい笑顔…。


12ヶ月の間、記憶の中のゆかりが俺を支えてくれていた。


だけど、これから先も思い出の中のゆかりの笑顔だけで、生きていけるかな…。



「…自信ないよ…ゆかり…」




ねぇ

笑って

泣いて

ケンカだって君としたいのに

なぜ…



「好きだよ…ゆかり…」


愛してる。


12ヶ月の間、伝え続けた俺の想いは、届いているか?


俺の声は、届いているか?


届いてるなら

どうか返事をして欲しい。