運命 13 12ヶ月 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

夕暮れがそっと 空を染めていく
あの日と同じように 風が吹いてる

遠い場所で聞こえている 
穏やかな波の音に


ずっと…君の声 探しているよ…





「…健ちゃん…っ!」







浜辺に黒いスーツを着た健ちゃんが佇んでいた。


あたしが呼ぶと、健ちゃんが振り向いて、少し笑った。

風になびいた髪が健ちゃんの顔にかかった。



「さっちゃん…」



走ってきたあたしは息を切らして、健ちゃんの前で立ち止まった。


「病院で、看護師さんに聞いたら海だって…」


健ちゃんが髪をかきあげて、あたしを見た。


「子供は?」


「旦那に預けて来た」


「無理しなくていいのに」


「無理じゃないよ。全然」


あの事故から一年が経った。


健ちゃんの彼女のゆかりちゃんは、一命は取り留めたものの、意識が戻らないまま、別の病院に移って、一年が経ってしまった。









「ゆかり、お母さんのお墓参り行ってきたよ」


健ちゃんは、病室に戻るとそう言ってジャケットを脱ぎ、ネクタイを緩めた。


「ほら。さっちゃんがお花持って来てくれた。いい匂い」


そう言って、眠っているゆかりちゃんの顔に花を近づけた。


「そこに活けとこっか」


って、あたしは花と花瓶を持って、病室を出た。



微笑みを浮かべて、ゆかりちゃんを見下ろす健ちゃんの横顔を見ているのが辛かった。




一年前…。



『ゆかりじゃなけりゃ、別の人が乗ってただろうし…さっちゃんがキャンセルしたことに罪悪感を感じる必要なんて、全然無いだろ』


健ちゃんはそう言ってくれたけど…


あたしは何かせずにはいられなくて、この一年、ゆかりちゃんの病室に通っては、あれこれと世話をしていた。