その花から視線を外さずに、手をすーっと上にあげていく。
肩で息をしながら、天に花を捧げるように真剣な顔で上を向く。
先生のセクシーな喉仏。流れ落ちる汗。
50人の手がまっすぐ天に向かって伸びていく。
ぴったり揃ったその動きに鳥肌が立った。
全員の手が頭の上でピタリと止まる。
その瞬間、雲の切れ間から、日の光が差し込んだ。
スポットライトのように、光の梯子が、天を見つめて真っ直ぐ立つ先生におりてくる。
雨に濡れた先生の髪やまつ毛や唇がキラキラと輝く。
目頭が熱くなった。
音楽が止んで、全員が整列して挨拶をすると、どっと拍手と歓声が沸き起こった。
団員たちは一目散に退場門へ駆けて行く。
先生が、退場門で、涙ぐむ団長の頭をポンと叩いたのが見えた。
それから、佐久間さんに後ろから話しかけられて、何か話している。
雨に濡れた佐久間さんの金髪が綺麗だった。
笑いながら、佐久間さんのお尻に蹴りを入れる仕草をする。
佐久間さんがお尻に手を当ててから、先生の肩をパンって叩く。
それから先生がダッシュして、佐久間さんが追いかける。
先生は生徒の中に紛れ込んで、生徒たちに囲まれる。
佐久間さんは佐久間さんで、生徒に取り囲まれて、ふたりは離れたけれど…。
あぁあ…。
ため息をついて、空を見上げる。
また雲が太陽を隠そうとしていた。
「持ちますように」
って条先生が隣で手をこすり合わせて祈る。
「あれ?先生、次赤団でしょ?救護テントなんかにいていいんですか?」
赤団は入場門に並んでいる。
「いいの。俺、こっからだから」
「え?」