運転席に乗って、ガソリンが少なくなっているのに気づく。
ガソリンスタンドのカード、お母さんどこに置いてるかしら?
助手席前のグローブボックスを開けると、バサバサッと車検証や地図が落ちて来た。
助手席のドアを外側から開けて、
「なにやってんの?」
って准が聞く。
「えっと…カードが…」
ふと、母の手帳が落ちているのに気づいて、拾うと、中から小さな古い写真らしきものがパラパラと二枚また下に落ちた。
准が拾って、首をかしげて写真を見る。
准の顔が綻ぶ。
「なに?なんの写真?」
ってあたしは眉をひそめる。
そんな古い写真を母が手帳に挟んで持ち歩いてたなんて…。
「これ、聡美?」
って笑顔であたしに写真を見せる。
生まれたばかりの赤ん坊の写真だった。
「こっちも…ふふ…可愛い…」
ってもう一枚を見せる。
若い頃の母が赤ん坊を抱いている写真だった。男の人が母に寄り添っているけど、父じゃない。
この人…。
「お父さん、今と感じが違うね?」
この人の顔…誰かに似てる。
「聡美…。ちゃんと…お母さん、聡美のこと愛してたんだね?」
初めて見る写真だった。
これ、あたし…?
そしてこの男の人…マスターに似てない?
あたしは、ふと思いついて、写真を裏返す。
母の字で書いてある文字の意味が、一瞬わからなかった。
ど、どういうこと?
あたしは震える手で口元をおさえる。
まさか…。
「聡美?…どうしたの?」
「嘘よ…。准…」
「なに?」
「准…マスターの生年月日、知ってる?」