スカウトの昌という若いのに目利きのスカウトがいたことを聡美は業界の取材で知り、マスターにたどり着いたというわけだ。
「目利きというか…」
「モテたのよね?要するに」
マスターが照れ笑いする。
「寂しい人が多いから…」
寂しい歳上の女が若いちょっと悪い男に入れあげる。そして、男のために店に出る。ありそうな話だ。
「若かったんで…同じ年代の子には逆に声はかけられなかった」
「どうして?」
「…やっぱり、堕ちて欲しくなかったんだろうね…自分みたいに」
「でも若い子の商品価値は高かったでしょ?女子高生を売りにしてる店もあったわよね?」
「他の連中は流れてたけどね。若い子に。やっぱり、騙されやすいというか…簡単だからね。商品価値が高いし、引き摺り込めば、長く稼げる。そのくせ、本人たちは商品価値をわかってないから、安売りしてくる」
「でも、若い子には声をかけなかった?」
「フッ。やってることは同じなんだけどね。未成年には手を出さない、その一線は越えないようにって…自分の中で…」
マスターが俺を見て、気まずそうな顔をする。
「お恥ずかしい話です。先生の前で…」
俺は何と言っていいかわからず、聡美を見た。
聡美は、チラッと俺を見てからマスターに向き直る。
「ファンシーラブってお店知ってるでしょ?」
マスターの顔色が変わった。
「未成年には手を出さないって言ったけど、あなた、あそこのスカウトやってたんじゃないの?」
「それは…」
「まさか、芸能プロダクションなんて表向きの看板を信じてたわけじゃないでしょ?」