疑い 4 マスターの過去 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

「はっ⁇」


開いた口が塞がらない。



絶賛猛アタック中って…マスターに⁇


「な…な…な…っ⁇」


言葉にならない俺を見て、聡美が腹を抱えてケラケラと笑いだす。


「可愛い~っ!准!」


「ちょっと…」



つられて俺も笑いながら、


「なに?なんだよ?なに言ってんだよ」

って聡美を抱き寄せる。



「ちょっと…どういう意味?なに?冗談だろ?」



聡美がケラケラ笑いながら、俺の腕の中で身をよじる。


「聡美っ!…こらっ。なぁんだよ。なに笑ってんだよ」



「あははっ」



聡美の嬉しそうな笑顔につられて俺も微笑んでるけど、内心めちゃくちゃ動揺してる。


「なんだよ?もう俺に飽きたの?」

マスターのこと好きになっちゃったの?


「ふふふ…。バカね…准。こんなにいい男なのに、もっと自信持ちなさいよ」


そんなこと言われても…。

聡美が俺の頬に手をやり、甘く見つめる。


「愛してるわ。准。大好き。あなたに夢中よ」


目を閉じて、俺にキスする。



「絶賛猛アタック中っていうのはね…取材のこと」



「え?」


「マスターに取材を申し込んでるのよ」


「え?」

ホッとすると同時に驚く。



「なかなかうんって言ってくれなくて…。日参しては、口説いてるの」


「なんで、マスター?」


「それは言えません」


ってツンと顎を上げる。


「なんで?」


「個人情報。誰しも知られたくない過去の一つや二つはあるものでしょ?」



マスターの知られたくない過去?

それを聞いてどうしようってんだ?



「ねぇ、これはあたしの大事な仕事の話。相手もあることだし、ベラベラ喋るわけいかないのよ。わかるでしょ?」




「それはわかるけど…」


「だったらそれ以上聞かないで」



って俺の唇にそろえた指先を当てる。


「マスターのOKもらえたら、書くから。准に一番に読んでもらう。ね?」


なんだか複雑な気持ちだ。



「人のあまり知られたくない過去を暴いて、どんないいことがあるんだよ?」


上目遣いで、つい、非難めいたことを言ってしまう。

すると、聡美の甘い笑顔がスッと消えて、真面目な顔で、しっかりと俺を見据える。


「准…あたしはいつだって女の味方なの。意義があると思うからやってんじゃない。ただのゴシップ好きじゃないわよ」



「…ごめん」



「個人的な体験を共有したいのよ。そのために書くのよ。過去をほじくり返して、その人を傷めつけるためじゃない」


「でも結果としてそうなるんじゃないの?」


「…そうならないようにしたいと思ってる。っていうか、そうね…それを越えたい」


意志のこもった目で遠くを見つめる聡美の横顔。


腕組みしたまま、パッとこっちを向く。


「知らないと問題意識は起こらないでしょ?…世に問いたいことがあるのよ。あたしには」


と言う聡美の目が、キラッと光った。