期待 3 席替え | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

※「裏切り」まで長くなりそうなので改題しました。「期待」の後に「裏切り」です。


健に言われて、俺は背中を丸めて小鉢とグラスを持って健が座っていた席に移動する。

「っと油断も隙もねーんだから…」

って、新城の椅子の背に手をかけてつぶやく。

「なに?その過保護」

って言いながら俺は健の小鉢とグラスを渡す。

「うるさいよ」

って健がそれを受け取り、

「箸」

って言う。


「箸がなんだよっ」

「箸も寄越せって」

「ちゃんと言えよ。『箸!』ってなんだよ偉そうに。やだねーこういう男。気つけた方がいいよ」

って俺は新城に目配せする。

「なんだよっ」

って健が笑う。

「『箸!』とか『お茶!』とか言っちゃってさ、いるじゃん?亭主関白気どってさ、男らしさを履き違えてる奴」

「お前だろそれ」

「は?俺はちゃんと言うよ?『申し訳ありませんが、箸をちょっと取っていただけませんでしょうか?奥様』って」

健が新城と目を合わせて微笑む。

「なに食う?フグもういけんじゃないかな」

って健がボソッと言って、新城の小鉢を手に取る。

「無視かよっ」

「え?なんか言った?」

冷てー。

健が優しく新城に話しかけながら、フグや野菜を入れてやっている。

「ポン酢もうちょい足す?」



健がパッと顔を上げて俺を見る。

「ポン酢」

「は?」

「ポン酢取って。条」

「俺はお前の嫁かっ!」

と言いつつ、ポン酢を探してキョロキョロする。

「そこそこ!手前!」

あったあった。

健がポン酢を注ぐ。

「あんま入れると濃くなるからねー…ん…ちょいっ!はい、ストップ!こんくらい」

なんでポン酢入れるだけで、いちいち可愛いんだろうこいつは…と思って、新城を見ると、新城も顔をほころばせて健を見ていた。

俺の視線に気づいて、健がポン酢を置きながら、

「なに?」

って言う。



「ポン酢入れるその気合いと集中力が仕事にも欲しいね」


健が笑って、面白いねって感じで新城を見る。


あのさー…。俺、帰った方がよくね?


「ちょっと…ビール買い足してくるわ」

「え?まだあるでしょ?」

「いや。まあ…一応…うん」

「あ。タバコ?」

「ああ、そう。うん」

俺はゴニョゴニョ言って部屋を出た。

気をきかせたつもりだバカ。

お迎えまでに帰さなきゃいけねーんだろ。可愛い大事なお姫さまをさ。