「よぉ」
「あれ?上野さんは?」
「ああ…なんかちょっと…用事できちゃって」
「用事?」
「佐々木と会うとかで」
「佐々木?」
「なんかなかなか足洗えねーみたいよやっぱ」
つまり、まだ秋葉原と切れてないってことだ。
「いいの?ほっといて」
「いや…うん…」
俺は顎を触りながらうつむく。
手を出したいのはやまやまだが、せっかく桜が頑張ってるし…ギリギリまで手は出さずに見守るつもりなんだけど。
「ま、とりあえず入れよ」
「こんばんは」
新城が振り向いて、お辞儀をする。
「よ。久しぶり。元気そうじゃん。なに?綺麗になったんじゃないの?ちょっと」
って言うと頬を染めて、そんなこと…///って手をブンブン振る。
ハッ。可愛いじゃねーかよ。
俺は新城の隣に座って、、
「こいつのせい?」
って健を指差す。
ますます頬を染める。
「あ。条、お前ねー、すでにそういうとこがおっさんだよ。なぁ?ゆかり」
って健が鍋の蓋を取って言う。湯気がふわっと上がり、美味そうな匂いがする。
「は?なにがだよ?どこがだよ?」
「そうやってねー、若い子をー、そういう話題で困らせてー、反応を楽しむって発想がね?おっさんなわけ」
健にやり込められて、俺は照れ笑いをする。
「おっさん?」
って自分を指差して新城に聞くと、新城がブンブンって首を横に振って、
「相変わらずかっこいいです…」
「はい来た!ほら、聞いた?健。今の」
って新城の肩を軽く抱いてポンポンってする。
「あ!ちょっと!なにやってんの?」
って健が前から手を伸ばして俺の手をどけようとする。
「あ!先生、袖が…っ」
「あ!」
健の着物の袖がポン酢の小鉢に浸かっていた。
「あーっ!やっちゃったー!」
健は慌てて洗面所に向かう。
何かひとりで騒ぎながらシミを落としてる。
「先始めようぜ。煮え過ぎちゃう。おーい!健、先食ってるぞー!」
「いいよー!ビール冷蔵庫から出して!」
俺は、鍋から新城に取り分けてやる。
「熱いから気つけて。…食える?」
「はい…」
へえ…。
新城がぎこちなく手を動かして、食べるのを俺はさりげなく見る。
リハビリの効果か。愛の力だな。
健が、良かったちょっとだけだったと言いながら戻って来た。
「すごい成長じゃん。新城」
「だろ?コーチがいいから」
「厳しいんです。健ちゃん先生」
「どSだからね」
「ですよね」
健は照れ笑いしながら俺たちを見ている。
俺は、部屋を見回して、
「いい部屋じゃん。広いし。一人で住むにはもったいないね」
ってわざとらしく言ってみる。
ブッ!って健と新城が二人して噴き出してむせる。
はは。おもしれー。プラトニックバカップル♡
「ね?いい部屋だね?」
って言うと、新城がむせながら、コクコク頷く。
「新城も初めて?」
「はい…ゴホッ…は…はじ…っ」
「ごめんごめん、大丈夫?」
って新城の背中をさすると、
健がむせて苦しい顔をしながら、やめろ触るなって感じで手をバタバタ振る。
「なぁんなの?お前だってむせちゃってっから代わりに…」
健が口を手で覆いながら、立ち上がってこっちに来る。
「ほへっ!はわれ!ふぁあっ!」
「はあ⁇」
俺は眉間に皺を寄せて、横に立って俺を椅子からどかせようとする健を見上げる。
「なんなの?お前ちゃんと食ってから言えよ。わかんねーしっ。わっ!飛んだ!なんか出てきたっ!汚ねっ」
「どけっ!こらっ!席替われって」