ふたり 1 いつものフラれ方 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

結論から言うと、海でののちゃんとデートしていた男は、やはり、ののちゃんの元彼だった。


つまり、早い話が、あの花火大会でふたりはヨリを戻したらしい。


花火大会で女連れだった元彼は、俺と一緒にいるののちゃんを目撃して、逃がした魚は大きい、とでも思ったんだろう。

俺は、図らずも、当て馬になっちゃったわけだ。


「ごめんなさい…」

ののちゃんが項垂れる。

ジャズピアノが静かに流れるバーのカウンターで、俺たちは飲んでいた。


「俺も、海で女連れだった言い訳…した方がいいかな…」


俺は、グラスを揺らす。カラン、と氷が音を立てる。


ののちゃんが、首を横に振る。

つまり、俺が女連れだったことを怒ってるわけでも、拗ねてるわけでも、ない。


「俺の一人相撲だったのか…」


ずっと俯いていたののちゃんが、バッグからハンカチを取り出して、両手で持って目にあてがう。


「……ふぇ……ぇぇ…ん…」


ふ、ふぇぇんって⁇


「の、ののちゃん…っ///」


い、いきなり泣くとか…。

マスターと目が合って、目を逸らされる。

俺?俺が泣かしたの?

泣きたいのは俺の方だっつーの!



「…宝先生と…普通の恋愛がしたかった…ぁぁ…ふぇぇ…っ…ん」


「は?なに?」


「あたしだって…あたしだって…」

しゃくりあげながら、涙で潤んだ瞳で俺を見つめる。


「ずるいこと言っちゃっていいですか?」


「え?」


「…先生のこと…好きでした…」


「……」


「だけど…彼を…ほっとけなかった」


「…ののちゃん…」


「先生は、すごく素敵だし、あたしなんかよりずっと素敵な人といつでも付き合えるし…」


「いや…そんなことない」


「あたしじゃなくてもいいけど…」


勝手に決めるな!


「彼には、あたししかいないんです…あたしじゃなきゃダメなんですぅぅ…ふぇぇ…ん」


なんだこの既視感は。

また、いつものやつか…。

だいたいダメ男に持ってかれるんだよなぁ…。

「准くんにはあたしよりいい人がいっぱいいる」

って何度言われたことか。


君よりいい人はたくさんいるかもしれないけど、君より好きになれる人はいないんだって…言えりゃいいのかもしれないけど…。

照れ臭くて、んなこと言えるかっ。

ってか、わかりきってんじゃん。そんなこと。だから、付きあってんだろ?


もう…泣きたいよ俺。