「けんちゃん先生~~っ♡」
「可愛い~♡」
先生の浴衣姿にはしゃぐ。先生の腕を取って、ぶんぶん揺する。先生は照れ笑いする。
「おじさんに言う言葉じゃないだろっ」
「だって可愛いんだも~ん」
「ねー?」
「彼氏でも全然通用するもん、ねー?」
「しないしない」
「するよー。付き合う?先生」
「付き合わねーからっ。子供とは付き合わねーよっ」
あ。…あたしも…子供なのかな…先生にとっては。
彼女たちが、思い出したように他の子たちに言う。
「そうだ。条先生の浴衣見た見た?超かっこいいのー♡」
「えー見たい見たい♡どこで会った?」
「あ!いたいた。あそこあそこ!」
あたしも一緒に指差す方を見る。
「え~~っ‼︎なにあれーっ⁈」
「女連れじゃーん!」
「彼女彼女?」
「マジ⁈ショックー」
条先生は、黒地の渋い浴衣を着ていた。
隣の女の人も、黒地にいろんな色の花柄の浴衣で、ふたりはとてもお似合いだった。
あたしも、あんな風に健ちゃん先生と並んで歩けたら…。
「あ、君ら夏休みだから知らないのか。あれ、彼女じゃなくて先生だから」
「えっ⁈」
「泉本先生が育休とったの。二学期からあの先生だよ」
あ。条先生にも、女子高生たちが群がり始めた。
「だから、しーごーとっ‼︎…巡回中だっつってんだろ?」
「彼女連れで?」
「公私混同じゃーん」
「彼女じゃねーっ!先生だからっ」
「先生、射的しよ」
「聞いてる?俺の話。なんでお前らと射的やんなきゃいけねーの」
「やってやってー!くまモン取ってよー!」
「小学生かっ」