正義の味方 7 そんな顔すんな | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?


「けんちゃん先生、いらっしゃい。どうぞあがって」


ゆかりの母親が玄関のドアを開けて笑顔を見せる。


いいにおいがする。


「カレーだっ!」

思わず言ってしまった。



「ふふふ…。どうぞ食べてってね」


子供じゃねーんだから…///
って自分に突っ込みを入れる。





ゆかりの部屋のドアをノックする。


「なに?」


棘のある声。


おっと…。母親だと思ったのだろう。いきなり、なに?はないだろー。


「俺だけど…」


返事がない。


「入っていい?」


ダメだと言われないので、俺はドアを開ける。

部屋は真っ暗だった。


「なに?電気もつけないで…」


ゆかりは車椅子に座ったまま、俺に背を向けて窓の外を見ていた。


明らかに、様子が変だ。


「電気…つけるよ?」 


俺は電気をつける。


「すげーいいにおいしてるからさー、いきなりお母さんに『カレーだ』って言っちゃってさー」


俺は、ゆかりの前に回り込む。


「一緒に食おっか?」


ゆかりが俺を見つめ返す。


久しぶりに、素っぴんのゆかりを見る。


高校生の頃と変わらない、まだ少女のような表情に出会って、俺は少し動揺する。


もう大学生になったから…。楽しそうに学校に通って、友達もできて、俺の手から離れる日もそう遠くないって、思ってたのに。


…そんな顔すんな。


泣き出しそうなゆかりを見て、俺は不安を隠して明るく笑う。


「なーに?どうしたんだよー?腹でも壊したの?」


ゆかりの顔がゆがむ。唇を引き結んで、俯く。


肩を揺らして、声を殺して、涙をこぼす。

「…せん…せ…ぇ…っ…」



胸が締め付けられるように痛む。



俺はゆかりの頭を引き寄せて、俺の胸に押し付ける。

ゆかりが声をあげて泣き出す。

俺は黙って頭を優しく撫でる。