たとえ今は誰も待つ者がなく、自分にしか成し遂げられないことなどないように思えたとしても、未来には必ず自分を必要とする誰か、自分によって生み出されるはずの何かが待っている―――そう意識することが絶望に抗う武器となるのです。
「すべての人間は、全宇宙にたった一度、二つとない在り方で存在している。そして、その一回性と唯一性が他に類を見ない、人それぞれの運命をもたらす。一人ひとりの人間に備わっているかけがえのなさを意識したとたん、生きること、生き続けることに対して私たちが担っている責任の重さに気づかされる。その責任を自覚した人間は、生きることから降りられない。もし運命があなたを苦しめるのなら、その苦しみを引き受けることに、二つとない何かを成し遂げる、たった一度の可能性がある。人間が生きることには、常に、どんな状況にも意味がある。苦しむことにも意味があるのだ。だから、人生に期待するのをやめて、人生から自分が何を期待されているかを考えよう。」
苦しくてたまらないとき、状況が好転することを期待しても、期待どおりにならなければさらにつらくなるだけ。しかし、この苦しみにも意味がある、この苦しみをとおして人生は自分に何を期待しているのだろうと発想を転換すれば、不安定な外的条件によって揺るがない「生きる支え」を自らの内部にもつことができる。
求め、期待する生き方から、かけがえのない人間存在一人ひとりに期待されている「果たすべき何か」を自覚して生きる自分へ。天が自分のまわりを回ってくれることに期待するのではなく、自らが回ることで自分という宇宙を動かし、人生をつくっていく。
(加賀乙彦 『不幸な国の幸福論』)
最近読んで感銘を受けた本の一説です。
日本は世界第二位の経済国でありながら、自殺者数は先進国でも高い水準。世界から見れば恵まれたような生活環境にいながらにして、なぜ日本人は悩み苦しむのかということをこの本には書いてあります。現代人は心の病を抱える人が多いと言われます。
苦しい状況が好転することを期待するのではなく、自分に期待されていることが何かを考える。言うは易しってやつですが、頭の片隅に置いておくだけでも少しは違うんじゃないかなと思います。かくいう自分も「鈍感力」を身につけたい今日この頃。まぁ敏感過ぎてすぐに悩むところも自分のidentityだけど。(笑)