スポーツをするお子さんを持つ保護者の方。
そしてシンスプリントに悩む選手を抱えるチームの指導者の方々へ。
ハワイ大学で行われた人体解剖実習で
僕が自分の眼で見てきた人体解剖とプロの先生から教えていただいた情報をシェアします。
どうぞご参考にしてください。
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『シンスプリント』はスプリント系のスポーツに多いケガの1つだけど
この症状の改善に半年前から僕は苦しんでいた。
シンスプリントは主に脛骨というスネの骨の内側に痛みが出るケガだ。
この症状に対して僕の整骨院時代からの知識と技術で対応したが全く歯が立たず、選手の症状を改善させてあげられなかった。
そこには落とし穴があった。
僕がシンスプリントのメカニズムを理解していなかったから、的を得たケアができていなかった。
だから学びなおさないといけないと思った、解剖学を。
ハワイ大学での人体解剖実習でシンスプリントの本当の解剖を学んできた。
ご指導を受けたのは、アメリカのスポーツ現場の最前線で活躍するアスレチックトレーナーの先生だ。
僕が今まで認識していたシンスプリントについてや、症状を改善できなかった自分なりの考えや理由を相談すると、的確な答えをいただくことができた。
シンスプリントは、脛骨(スネの骨)の内側を通る後脛骨筋(こうけいこつきん)という筋肉の使いすぎや、硬くなることで起こるとされている。
それにより、後脛骨筋が付着している骨の部分を引っ張り痛みが出る。
…というのが僕のこれまでの認識だった。
オーバーユースや足の裏が真っ平らになる扁平足が原因とされていて、痛みのあるうちはトレーニングや競技は休むというのが一般的なケアの方法だ。
整骨院時代にもシンスプリントの学生が何人もきては、電気をかけたり後脛骨筋へマッサージをしていた。
しかし、KCで半年前に受け持った選手に対して、この知識と認識で対応したが全く改善がみられなかった。
選手自身のケア不足だから痛みが取れない、というのは施術者側の言い訳だ。
もちろん、選手は自分でケアをしなければ必ずケガをするし、して欲しいとも思っている。
だけど、症状が改善するかどうかを見立てるのがセラピストの仕事だから、1mmも全く症状が変わらないということは見立てそのものが間違っているということだ。
見立てが間違っていれば的確なケアもできないし、セルフケアも指導できない。
それなのに症状が良くならないのを選手のセルフケア不足のせいにするなら、それはもはやセラピストとは呼べない。
セラピストとしてあまりにも無責任すぎる。
だから僕はもう1度シンスプリントについて学びなおさなければならなかった。
まず解剖した様子について。
後脛骨筋が足のどこに、どんな風に付いているかのか。
まずこのことを知っていないと始まらない。
スネの骨の内側から指をグッと入れて、固まってしまった後脛骨筋をマッサージするというのがこれまでの僕の認識だった。
つまり後脛骨筋に直接触れていたという認識だ。
けれどこれは間違いだと、改めて認識した。
ホルマリン処理されたご献体でまず見てみたけれど
スネの内側から後脛骨筋を的確に捉えることはできない。
(あくまでも僕にはそう見えた)
解剖書のイラストを見ると触れそうに描いてあるが、実際は脛骨と腓骨の隙間を埋めるように深い位置に存在していて
骨間膜とコラーゲンの繊維で繋がっていた。
足の中心の奥深くにある筋肉だということだ。
触れられない理由はそれだけではない。
仮に後脛骨筋を触れるのだとしたら、それまでにいくつもの壁が存在する。
まずはふくらはぎの筋肉の腓腹筋。
その下にヒラメ筋が存在した。
僕はむしろヒラメ筋は触れないんじゃないかと思っていたぐらいだ。
おかしい話だ。後脛骨筋は触れて、ヒラメ筋は触れないなんて。
その認識はまるで逆だった。
そして、ヒラメ筋の下には長趾屈筋あり、さらにその下に後脛骨筋があった。
位置確認するために、足裏の付着部から辿って確認を試みた。
そこでユニークな事実を目の当たりした。
ユニークだと思ったのは、2つの筋肉の走行だ。
長趾屈筋と後脛骨筋はそれぞれスネの骨から
内果(うちくるぶし)を通って足裏の方へ伸びている。
スネでは奥に後脛骨筋、その上に長趾屈筋だけれど、内果ではそれが逆になる。
解剖書には後脛骨筋があって、長趾屈筋があるように描かれているから、筋肉の付け根の位置も同じだと思い込んでいた。
それが後脛骨筋がスネの内側から触れると思っていた理由だった。
皮膚を剥がし、腓腹筋とヒラメ筋を開いた後にまず見えた筋肉が後脛骨筋だと思った。
けれど、足裏からの腱を辿っていくと見えている筋肉が後脛骨筋出ないことがわかった。
長趾屈筋だったというわけだ。
今実習は世界を股にかける治療家 Ken Yamamoto先生のプロデュースする解剖実習で
Ken先生のチームだけに許されたフレッシュの生のご献体がある。
生献体でも後脛骨筋の位置を確認したが、やはり長趾屈筋に隠れていたし、腓腹筋・ヒラメ筋の筋膜にも阻まれていた。
もちろん大学の先生にも確認をとった。
するとやはりそうで、僕の後脛骨筋と長趾屈筋の位置関係は逆だったことが判明した。
僕には後脛骨筋は直接触れるような筋肉にはとても認識できなくなった。
僕が今まで触っていたと思っていたのはヒラメ筋だったのだろう。
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次にシンスプリントの発生メカニズムについて。
医学書やネットで見ればだいたい書かれているのは『オーバーユース、扁平足』辺りだろうか。
O脚や筋肉の柔軟性がないといった記載もよく見る。
これらは確かに正しいのだろう。
問題なのは、僕がそこで思考を止めて、原因からケアを導き出せなかったということだ。
もしオーバーユースが原因なら、後脛骨筋にそれほど無理をさせている原因をさらに見つけ出さないといけないし
扁平足やO脚といった骨格や関節の歪みが原因なら、何故それらになってしまったのかも明らかにしないと、有効な治療計画は立てられない。
ソールや靴を作るにしても、どうして作らないといけないのか、本当に作らないといけない症状なのかも精査しないと本当はいけないはずだ。
それらをしなかった、できなかったのは僕が解剖学を知らなさすぎたからだ。
扁平足が原因だと先程も言ったが
その反対の甲高(足の甲が持ち上がりすぎている状態)でもシンスプリントは起きると教えてもらった。
これは目から鱗だった。
後脛骨筋は足の甲を持ち上げることも働きの1つだ。
後脛骨筋が異常に縮こまり引っ張る力が強すぎると甲高になり得る。
それほど硬くなった後脛骨筋が痛みを出すことは十分に考えられる。
だから、扁平足だけじゃなく、甲高でもシンスプリントは起こりうるということだ。
筋膜の観点からみてみよう。
後脛骨筋と長趾屈筋は同じ筋膜で包まれている。
腓腹筋やヒラメ筋も同じ筋膜なので、2つの大きい筋膜のくくりで分けられている。
そこに筋膜同士の摩擦が強くいこるほどの運動を繰り返せば、筋膜が擦れスカーティシューができるかもしれない。
また、後脛骨筋と長趾屈筋同士でも擦れれば同じことが起きるかもしれない。
今回の解剖で僕が学んだこととして
筋膜と脂肪にも繋がりがあって、コラーゲンの繊維で繋がっている。
ストレスの強い部分はあらかじめ筋膜が厚くなっているし、潤滑を必要としている場所の筋膜はまるで綿飴のような蜘蛛の巣状のような
動きもつけられてなおかつお互いを連結させておける強度を保つような繋がりもこの眼で確認した。
後脛骨筋の周りのコラーゲン組織はそこまで強靭と呼ぶほど強いつながりではなかった。
もしそうであれば、後脛骨筋に過度な負荷がかかるような脚やカラダの使い方は1度見直さないといけないということが考えられる。
じゃあ膝かな?じゃあ股関節かな?もしかして背骨かな?
そんな風に観察場所はどんどん広げることができる。
僕は股関節に注目していたけれど
股関節の異常が扁平足や甲高を作り得ると考えていた。
その考えは間違いじゃないと回答を先生からいただいた。
もし股関節が原因の多くを作っていると判明すれば、今度は股関節の分析とアプローチへと移っていける。
僕が診ている選手たちは股関節に問題を抱えている子がほとんどだ。
そこまでわかっていながら有効打を打てなかったのは、僕の解剖学に対する知識が浅かったから。
もちろん発想の転換力も足りないけれど。
しかし、今までにない有力な情報を得ることができ、判明しなかった部分が判明したことで
シンスプリントへのアプローチ法に光明が差した。
よほどの衝撃を受けて痛めたのではない限り
シンスプリントは昨日今日何かあって起こったのではなく、もしかしたら小学校・中学校時代の影響だって考えられるそうだ。
もし時間をかけて選手自身が作り出したカラダの結果のひとつだとしたら
治るまでの時間と手間、ケアの仕方には十分理解をする必要がある。
そのことを親御さんはじめ、チームの指導者の皆さんも理解が必要だろう。
であれば、シンスプリントにならないようにもっと前から準備したり予防することは非常に有効じゃないだろうか?
大事な試合の直前にカラダを壊したのは決して選手だけのせいじゃない。
ましてやジュニアスポーツなら、大人の協力は必須だろう。
痛めてから医療機関へ駆け込んでも限度があるし、カラダが治るのには時間がかかる。
だから僕は富士北麓のスポーツに関わる皆さんに伝えたい。
痛めてしまっても、可能な限り最短で現場復帰できるサポートも行うし、予防をすることができるならその方が絶対にいい。
痛みを経験すれば誰しもこう思うだろう。
「あの時、もっと早くやっておけばよかった」と。
喉元過ぎると人間忘れてしまうけどね。
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もし今シンスプリントに悩んでいるなら
周りにそういう人がいるなら
この情報が解決のヒントになれば嬉しいです。
もし疑問や相談があればご連絡ください。
…できれば早い方がいいと、僕は思いますよ。
《ケン カイロプラクティック Ken Chiropractic》
腰痛・肩こり専門 産前腰痛 トータルケア施術院
□代表□
堀内 賢(ホリウチ ケン)
□ホームページ□
https://www.ken-chiropractic.com/
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