夏も本格的になってまいりましたが皆様、いかがお過ごしですか?

今年も異常気象が続き、先週はボローニャにいるときには雹が降った!さいわい車を地下駐車場に停めていたからよかったけど!

さて、わたしは6月はロッシーニの『スターバト・マーテル』を歌い、演奏会形式での『ファウストの劫罰』を歌っていました。

劫罰はたった1公演でしたけど、音楽院時代から準備していたこの作品をやっと歌えました!メフィストフェレスというあまりに素晴らしい役柄を演じられた、思い出深い公演になりました。

『スターバト・マーテル』はわたしのベスト演奏に近い公演になり、ジャーナリストにもよく書かれ満足です!

9月にペーザロ大聖堂での重要な再演がありますから、改めて勉強し直して挑むつもりです!このシーズンは、小ミサ曲とスターバト・マーテルというロッシーニの主要宗教曲をふたつとも歌えました!


7月からは、Carmina Buranaを受ける代わりにロッシーニ音楽祭の仕事を受け、9月にまた『スターバト・マーテル』、10月は『Trovatore』と劇場のガラを歌います。

が、11月以降は白紙にしています、、、、

年末のフォーレのレクイエムと、シャルパンティエの『テ・デウム』は興味がありますが、

ハッキリ返事はしてません、、、。



本日は後方筋について、しかし、わたしは、これまで1度もちゃんと書けてなく、この記事はなんと3ヶ月下書きを繰り返しました!


読んでくださるあなたに記事が届けられる縁に感謝します!


わたしはメロッキ派として、同派閥の諸先輩方ならびに同僚諸君とともに、喉頭の後ろの、声門下圧で生み出されるスペースを楽器として、全音域を歌えるよう訓練し、その歌い方のために、喉頭の微細な筋肉を含む身体のサポートを考えました。

それは、ひとつの方法論として正しいと断言します。わたしは、この方法論を生徒に、唯一絶対の方法論としては教えず、基本的方法論としても教えませんが、しかし、いちおう、生徒の皆さんには、この方法論は、キャリアのどこかで、理論的にはマスターしてもらいます。


わたしは2018年2月から5月までのドン・ジョヴァンニの主役を歌う時、この方法論を、表現上の理由で採用しました。それは、明るく輝かしいドン・ジョヴァンニをつくるため。そのとき高い声門下圧を上半身の筋肉でサポートし(肋間筋、鎖骨筋、息を止める筋肉)そこで圧力を留めるか、あるいはそこから胸に向かって歌うような感じ。


でも、たとえばアウグスブルグでのローエングリンとシモン・ボッカネグラならびに3月の運命の力では、もっと深くからサポートし、声門下圧を高く維持するよりかは、ジラーレを意識する感じ。


さて、しかしながら、共通するのは、声門下圧にどう空気をためていくのか、です。

声帯を開いて口から、鼻から、空気を取り入れるだけでは、声門下圧は高くなりません。

声門下圧を高めるには、喉を開けるには、

【下から吸い上げる力を使います】。

いちばんはじめに聞いたのは、ジャコミーニの、大地から吸い上げるように、というアドバイス。

わたしが新国立劇場小劇場で稽古してる際に、大劇場でバタフライを歌うのを聞いたが、まさにそれは究極の密閉の中での息の扱い方。

どこから吸い上げるかに関しては、歌手それぞれのご意見があり、わたしが尊敬する元ウィーン国立劇場の歌姫の方は、股の間から吸い上げるかのように、と。

わたしはまずはこう述べます。

背骨のパイプを空気が【低い圧力で】通りぬけ声門の下に(いったん)貯まります、と。

わたしが、後方筋に関して言える半分の正解がこれで、後方筋の、息をアップさせる役割です。

C文字で言うと、左半分が、後方筋と斜腹筋が担います。

後方筋のもう半分の機能は、鼠径部から息をバックさせる機能で、【綱引きを引く(L.Brioli)】ように使います。膝のサスペンションを使い、ダンスするように、固まらないように使うと良いですね。


ようするに、わたしはかつてのgiaccominiならびに、ウィーン国立劇場出身の女史、のコメントから、僭越ながら、アップデートさせ、

つまり、声帯に下から上に直線的に息が向かうように吸い上げるのではなく、

斜腹筋と、また横隔膜したの筋肉をつかってジラーレさせ、

低い圧で声門の下に空気が集まるように、

サポートする、ように、

指導しています。


声門へと強い圧がまっすぐ向かわないためにやるべきことは、カーブをつけることと、吸い上げるような、低い圧力を保つことです。

ただしこれは声門下からみぞおちにかけては【高い圧で】息が使われることとは矛盾せず、その高い圧の息は、吸い上げるようではなく、明らかに呼気です(colpo di petto)。


わたしはよくBere la voceのベルカント技法からSostegnoの本質を学んだと生徒にディスカッションしてきました。記憶にあるかたはレッスンノートを読み返してみてください。


ようは、【声門下からは高い圧、声門までは低い圧でないといけません】が、

それはまるでディーゼルエンジンのインジェクションと似ています。

ちなみに、燃料をシリンダーへ呼び込むポンプをpompa pesca といい、ストローで吸い上げるように燃料が供給されます。


また、わたしは、ヨガをしないのでわからないが、ヨガ式呼吸法と結びつけて、下から吸い上げるように息を使うと主張する人もいますが、

わたしが不満なのはヨガ式呼吸法での歌では

この圧の交代を説明しません。

低い、カーブをともない、集められた息は高い圧で胸からみぞおちまで落ちてゆきます。


さて、最大の謎は、この、声門下圧までの空気を吸い上げる部分は果たして、単に息を吸うのか、歌うのかですが、それがつまり、前者がメロッキ派の呼吸であり、後者がロングブレスのなかでレガートに歌う新ベルカント派の呼吸法です。


しかし、この記事を読んだ皆様には、この2つの派閥はSostegnoとしては同じシステムを共有していることに賛成してもらえると思います。

後方筋を使い、ゆっくり吸い上げる部分を、歌うのか歌わないのかの違いはわたしには、表現上どちらも使うべきだという考えです。


歌うにせよ歌わないにせよCの文字の最初の4分の3はきれいなカーブであるべきです。きれいなカーブであればあるほどみぞおちで受け止める時、つまりそれはアクートのとき特に重要ですが、柔らかくて力強いです。


ロングボウかショートボウか、は、

あなたの基本スタイルにしてもいいし、

フレーズでの表現によって変えてもいい。

後者を勧めますが、巨匠は往々にしてどちらかを基本スタイルにしてきました。

ただし、唯一わたしが勧めないのは、圧力を声門の下で留め、高い圧をもっぱら声門下で完結する歌い方です。筋力がいくらあっても足りませんし、筋力があったところで、喉を固めて歌うことになりかねません。


次回で、いよいよシリーズは完結します。

ここまでご愛顧ありがとうございました!

では次回に!