地震(その3)

 

 

西神戸から姫路に帰ったのは、もう深夜だった…

あいかわらず会社とも連絡が取れず、

あまり寝ないまま、再び神戸に向かった

そして、深夜姫路に帰る…

 

そんな生活がしばらく続き

車での移動は、う回路が だんだん大回りになっていき

とうとう中国道付近まで迂回しないことには

神戸に入れなくなった

 

スクーターを買った

 

水を運んだ

 

須磨の水族館の近くの姉夫婦の実家は全壊

めちゃくちゃに壊れた瓦礫のてっぺんに

悲しげな便器が、風でゆらゆら揺れていた

奇跡的に義父母は助かっていた

 

三宮の中心にいた叔母の4階建てのビルも

2階が無くなって、いがんだ状態で建ってる

従姉が3階から手を振ってる

表情は明るい

そんななか、「若いドクター」のグループが

壊れた叔母の建物の前で 記念撮影してる

「ピース」

笑顔だ

目の前で何が起こってるのか

もうなにも理解できなくなった

 

三宮東門街付近の建物やビルは

いろんな方向に歪んで建ってる

不思議な光景だ

 

青春のサンプラザ、そごう、大丸、商店街、ダイエー…

あ…数えきれない

それらのすべてがモノクロ写真のように

死骸のように滅茶滅茶に壊れてる

 

もう、終わりだ

 

ただ、ひたすら、

黒煙で曇った空の下

無数の消防車のサイレンがこだまする

 

 

そのあと、親戚、友人、知り合い…

片っ端から安否を確認しに行く

全部回ったら、一か月近くかかった

 

親戚が、一家犠牲になった

倒壊した建物の下敷きになって火が出たらしい

せめてもの救いは、倒壊した時点で亡くなったらしい

熱い思いしなかったね

その後、兄弟が持っていた馬が

日本一になった

 

神戸が…神戸が壊れた

町が無くなった

たくさんの人が亡くなった

 

青春が消えた

思い出が消えた

 

 

でも…それでも…

 

28年のちの

1月17日がやがてくる