【連載】どうなる?医療事故調《3》 大村秀章議員に聞く | kempou38のブログ

【連載】どうなる?医療事故調《3》 大村秀章議員に聞く

【連載】どうなる?医療事故調《3》


「医師法21条は死文化します」
大村秀章衆議院議員(医療紛争のあり方検討会座長)に聞く
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/200801/505406.html


自民党議員でつくる「医療紛争のあり方検討会」は昨年12月21日、医療事故調の素案である「診療行為に係る死因究明制度等について」(いわゆる自民党案)を発表した。同 検討会の座長として自民党案を取りまとめた大村秀章衆議院議員に、案の狙いを聞いた。


※インタビュー収録:2007年12月18日。


──どういう経緯で、議員が検討会を取りまとめることになったのでしょうか。


大村 私は2006年の9月まで党内の厚生労働部会長をやっていましたから、医療制度改革法を自民党内でとりまとめて国会で通すなど、医療の議論には中心的にかかわっていました 。その過程で、医療紛争を扱っていく中立の第三者機関が必要だという機運が高まったため、06年の9月から、自民党の中で「医療紛争処理のあり方検討会」を作り、私が座長 になりました。


──その検討会では何を検討されてきたのですか。


大村 06年はまず産科の無過失補償制度をとりまとめました。保険会社と組んで、脳性まひで生まれた方に対する無過失補償制度を作ろうということで合意して、医療機能評価機構が 検討して骨格を作りました。そして、さあ次は第三者機関だと考えていたら、私が06年末に急遽、内閣府副大臣に任命されたので、しばらく検討会は休止しました。07年8月 に副大臣の任が解けて、検討会を再開したら、10月に厚労省から第二次試案が出て、

大方の方向はでき上がっていました。それで、私たちも検討会で検討して自民党案を作りま した。

──自民党案は厚労省の試案とどう違うのでしょう。


大村 第二次試案では、何をやるのかが抽象的だったので、医療現場の方々の誤解や憶測を呼んだのだと思う。案の内容自体は悪くないが、誤解や懸念を生んだのは事実です。なので、 自民党案はガラッと趣を変えて、具体的にどういう組織を作って何をしようとしているのかが、きちっとイメージがわくように書き換えました。組織の趣旨や委員会の構成、再発 防止の方法、民事・刑事での扱いなどのポイントは全部書いてあります。この組織が責任追及を目的としたものではないことも、きちんと明記しています。


医師法21条は死文化する


──自民党案を作った狙いはどこに。


大村 私どもの一番の狙いは、医師法の21条を死文化すること。刑事処分に問うのは、重過失や故意などの悪質な場合だけというように、法律の条文を書き換えようと思っています。 これをご覧いただければ、医師の方々の懸念は解消できると考えている。あとは、処分する、しないを、どこで線引きするかなんですよね。これは医療界の皆さんに十分議論して 線引きしていただきたい。


──線引きは難しくないですか。


大村 難しくないですよ。これまで判例の積み重ねがいろいろある。本当にひどい例以外は刑事処分にならない。本当にひどい例とは、医師の間でも満場一致で「それは刑事処分で当然 」と決まるようなもの。腎臓を取り違えたとか、こういうのはダメだと思う。故意ももちろんだめですよ。そういった線引きは、これまでに判例もあるし、線引きは可能です。こ れを医師の間で公開の場で議論していただければ、おのずと基準はできてくる。医療行為にどんどん網がかぶせられ、しょっぴかれるという心配は全くありません。

その判断をしっかりやるために、医療界から人的資源をしっかり投入していただかなければなりません。もちろん予算はきっちり手当てします。


──事故の届け出が増えるという心配は。


大村 確かに今まで警察に行っていた数よりも届け出は増える。しかし、この制度では、警察ではなくて第三者の調査が入るんです。第三者の専門家が調査して解説すれば、申し立てら れたほとんどの方が「そうですか」と言って帰られますよ。きっと。そうすれば、裁判になる例が減ってくると思います。

それから、刑事手続きに当たっては、「警察に連絡する必要がある場合」に連絡すると書いています。まず委員会が調査して、委員会が警察に連絡して初めて捜査が始まるという 流れになるので、警察への届け出も今より相当減ると思いますよ。そのための組織です。

ここ1年、刑事立件の件数は減っているんですが、その理由は、われわれ自民党がこういう検討会をやってるからです。変に立件しないでおこうと抑えているわけです。実際のところ、検察も医療事故の立件なんてやりたくないんですよ。物証がないことが多くて、遺体も焼かれているし、カルテを見ても専門用語が分からない。起訴もしたくないから、不起訴になることがほとんどです。だから検察や法務省も、「専門的な機関でやってくれればありがたいし、ご協力します」と言っているのです。


別に白紙に戻しても構わないが


──現場からは反対意見も結構出ているようです。


大村 私どもの案がもしご不満で、「こんな制度は要らない」というのなら、別に構いません。案を流して白紙にしてもいいと思うんですよ。その代わり、21条はもっと強力にいくと 思いますよ。

残念に思うのですが、いろいろと話を聞いていますと、「医者は一生懸命やってるんだから免責にしろ」という意見があるんです。でもそれはやっぱり非常識だと思うんです。遺 族の意見を聞くと、「病院は隠す、ごまかす、逃げるので困るから、客観的に判断する制度を作ってほしい」という要望があるんです。今の状況では、医療界から「ぜひやってください」という意見を表明していただくしかないと思います。


──医師会の意見はどのようなものでしたか。


大村 日本医師会の役員からは、何も問題ないと聞いています。日本医師会は12月に、47都道府県の医師会の医療事故担当の理事を呼んで説明会を開いたみたいですが、その際に西島理事や木下理事がこの制度を説明したところ、皆さん「分かった」と言って、問題なく帰っていったと聞いています。


──市や郡レベルの医師会からは、反発の意見が結構出ていますが。


大村 そういった話は聞いていません。ただ、現場で様々な意見があるのは事実でしょう。医療者の方々にはとにかく、真摯に受け止めていただかないと、むしろ批判される恐れがあり ます。私はそれを懸念しています。

この組織は、行政のためでなく、日本の医療のためのものです。医療事故は必ず起きるけど、真実を中立客観に評価する機関を設ければ、そのことが再発防止や医療の進歩につな がる。遺族にとっても事実が何かが分かれば、それに基づいた法的な対応もできてくるわけですよ。解決の場が裁判だけという状況は、早く変えなければならないと思います。


──この案のままで法案提出になるのでしょうか。


大村 これから法案として今年の通常国会に出していきますが、これは内閣の提案する制度、つまり閣議法案でいきますから、政府側に答弁させなければなりません。だから、抽象的に ならないようにしっかり詰めて、法案を審議するときには、ここはこうするんだという具体的なものを示して審議しようと考えています。