私は正常なひねくれものですから、横浜のカジノ反対70%超という調査結果を見て、つい一言、茶々を入れたくなりました。一言とはいえ、長~い一言です。

 

 カジノ反対運動が盛り上がっていることをネットで知って、1967年、東京都知事に初当選した美濃部亮吉が、就任2年後、「競輪の利益で学校などを造ったら、子どもたちは喜ばない」というおかしな理由で、後楽園競輪を廃止したことを思い出します。

 美濃部の政策によって、ギャンブラーは減るどころか、パチンコに流れて、パチンコ店が大繁盛。パチンコ依存症も増加! 東京都は貴重な財源を失い、やがて深刻な財政難に陥るという皮肉な結果を招いたのです(かなり単純化していますが)。

 

<1909年、女性市民運動のおばさんたちが、ギャンブルを違法にするよう政治的な圧力をかけた。1910年、ネバダ州議会は、おばさんたちの怒りから市民を守るためギャンブル禁止法を通過させてしまった。

 ギャンブラーたちの長い冬の時代、20年もの間、ネバダでは賭博が許されなかった。

 男たちはどれほどトランプを恋しがったことだろう。そして、人々はラスベガスを去り、不況が訪れ、1930年になって、ようやく分別を取り戻したネバダ市民たちが、ギャンブルの合法化に投票したのである。>(「ゴッドファーザー」の原作者、マリオ・プーゾ)

 

 横浜にギャンブルはいらないと言う美濃部的「偽善者」は、横浜に何軒パチンコ店があって、どれだけのギャンブル依存症を生み出しているのか、考えたことがあるのでしょうか。

 日本はギャンブル依存症率の高い国だから、これ以上依存症を増やしてはいけないという主張があります。日本のギャンブル依存症患者の人口比は3.6%、患者数は320万人と推定されているそうです。これは、世界平均の3倍だとも言われているらしい?

 これ以上、賭博場を造ったら、ますます患者は増える、さあ大変というわけです。

 

 しかし、ギャンブル依存症の多くはパチンコ中毒ですから、パチンコ店をつぶせば、依存症患者は劇的に減少するはずです(韓国、台湾はすでに全廃)。そして、問題はパチンコが庶民のギャンブルだということです。依存症になると、貧困生活を余儀なくされます。そして、われわれは「子どもを車に残してパチンコに熱中し、子どもを死亡させた」というニュースに何回接したでしょうか。ギャンブルはよろしくないというのであれば、まずはパチンコに焦点を当てるのが正義というものです。

 今からパチンコを廃止するのは、なかなか難しいとは思いますが、よりギャンブル性の低い「娯楽」に転換していくことは可能でしょう。パチンコに触れずして、ギャンブル依存症患者の数や率に言及する論文は全く意味がありません。 

 

 一方、カジノは金持ちのギャンブルです。予定されている入場料6000円を払ってまで出かけて行く庶民はほとんどいないと思います。6000円もあれば、パチンコも競馬、競輪も十分楽しめるからです。

 そして、最大のギャンブルは先物取引や株取引あるいはリスクの大きい金融商品であることも忘れてはいけません。これに反対する運動は聞いたことがありませんね。カジノも含めて、これらは金銭に余裕のある人たちの「ギャンブル」です。

 ですから、反対運動をしている(たぶん)庶民は、金持ちがギャンブルで負けたら、「ザマアミロ」と大喜びすればいいだけです。われわれが、金持ちの心配をするのは、よけいなお世話というもの。

 金持ちが吐き出したお金で横浜が少しでも潤えば万々歳。将来的に税収の増加が見込みにくい地方自治体で、IRというギャンブルに賭けるのは、実に英断だと思います。

 庶民のギャンブルを野放しにして、金持ちをギャンブルから守ろうとする「金持ち保護主義」のカジノ反対論者は、もしかして庶民の敵かもしれませんよ(冗談ですよ)。

 

 話はそれますが、ここでまた思い出しました。

 確か、JRAが新横浜に馬券売り場を新設するときにもかなりの反対運動があったと思います。そのときも、おそらく今回のIRと同じような反対理由だったように記憶しています。しかし、すべては杞憂(きゆう=将来について、いろいろ心配すること)に終わったのではないでしょうか。環境が悪くなるという意見も強くありました。私は日産スタジアムに行く途中、ときどき馬券を買っていますが、周辺も含めて、意外に清潔で、いかがわしい人も見受けず、環境が悪いと感じたことは一度もありません。年寄りに憩いの場を与えているのではないかとさえ思いました。

 

 また、本題に戻ります。

 カジノ誘致のメリットを考えてみましょう。

 まずは外国人観光客の増大です。

 海外のお金持ちにとって、カジノのある港はとても魅力的です。

 横浜は日本で最初に開港した港の一つですから、日本初あるいは〇〇発祥の地というモノ・コトが日本一多いことは、皆さんご存じでしょう。

 その地に日本初のカジノができれば、まずは好奇心旺盛な人たちが、お手並み拝見とばかりにやってくるはずです。そこで、日本のIRの実力をみせつけることができます。

 外国資本が入る可能性が高いと思いますが、さすがと思わせる日本的「おもてなし」のアイデアを横浜市民挙げて提案したらどうでしょうか。IRは決してカジノが中心ではありません。

 横浜観光には、古い歴史と「みなとみらい」のような新しい歴史が同時に見られるという魅力があります。そこに未来型総合リゾートを加え、川崎から横浜、鎌倉、小田原、箱根まで、世界一心癒される観光エリアKANAGAWAを完成させれば、神奈川安泰、反対の理由も薄れるのではないでしょうか(甘いかな)。

 

 誘致のメリットは、ほかに経済的な効果、雇用創出、新しい財源の確保などが上げられますが、捕らぬ狸の皮算用とならぬよう、慎重な試算が望まれます。

 当然ですが、メリットよりデメリットを検証することのほうが、はるかに重要です。

 

 心配されているのが、ギャンブル依存症の増加とそれによる自殺者の増加、犯罪の増加、消費がギャンブルに流れる、などです。

 しかし、これを感情的でなく、ある程度の科学性をもって予測するのは不可能に近いと思います。たとえば、犯罪の増加はありうると思いますが、逆に違法カジノに手を出している裏ギャンブラーを表の世界に出すことになるので、反社勢力に打撃を与え、潜在していた犯罪は減ることになるかもしれません。

 依存症の増加はほとんど期待できません(反対運動者にとってですよ)。あんなに規制の多いカジノに入れ込むギャンブラーはいません。したがって、犯罪が増えるという予測も外れる可能性が大です。消費がギャンブルに流れるという意見に至っては、ギャンブルをしたことのない人の思い込みにすぎません。

 むしろ、法案を通すため、あまりに規制が多いのが気になるほどです。ギャンブラーはカジノで解放感を味わい、奔放に遊びたいはずですから、思惑通りの入場者を確保できるのか。十分な利益を生み出せるのか。そちらのほうを注視すべきだと思います。

 そして、現在もっとも怖い依存症は、子どもたちの「ゲーム依存症」です。カジノ業者は、将来、そうした人たちをターゲットにしてくるはずですし、スマホでゲームにはまっている人にこそ警告が必要なのです。「ゲームを止めなさい運動」のほうが社会にとって、よっぽど有益ではないですか。このことに気づかない、あるいは気づこうとしない反対運動はイカサマ(ギャンブル用語)と断言していいでしょう。

 

 なんだか、私がギャンブルを好み、カジノに期待しているような書き方になってしまいました。しかし、本意は、地方自治体の財源として、「IR」に手を出す価値が十分にあるだろうということです。カジノはしょせん金持ちの修羅場。われわれは、お金持ちが落としたお金の恩恵を「ありがたく」お受けすればいいのです。

 

 ギャンブルは人生を破滅させるといいます。しかし、株で損するのも、新事業に失敗して負債を抱えるのも、カジノで負けるのと何ら変わるものではありません。人生そのものがギャンブルだという言い方もできるでしょう。

 その意味では、IRを造ること自体がギャンブルなのです。IRに賭けるチャンスを見逃すより、思い切って勝負してみるほうが、スリリングで楽しくないですか。

 ギャンブルは悪だと決めつける女性の気持ちは理解しますが、売春とギャンブルは世界で最も古い「欲望産業」で、世界から消えることはありません。しかも、両方とも闇営業になりがちですから、公的ギャンブルは必要悪と割り切ることも悪いことではないと思います。

 

 反対運動を熱心にやっているおばさんたちは、将来、横浜が美濃部東京のようになった場合、責任をとれるのでしょうか。

 成人にとって、すべての行動は自己責任です。甘えてはいけません。

 

 最後に、ギャンブルを「悪」としか捉えられない人には、ローマのことわざをお贈りします。

<すべての悪は、必ずしも害をもたらすわけではない>