夕暮れ。

港。

君。

僕。

ふと見上げる。

風が吹いて。

波の音。

なんだかおかしくて。

笑う。

顔を見合わせて。

大声で。

一拍。

目を瞑る、君。

顔を近づける、僕。

触れる。

目を開く、君。

また見合わせて。

笑った。


真っ暗な世界に住んでいた。
何も聴こえない、何も見えない。
ただただ、死んでいないだけ。
歩き疲れて休んでも、
誰も手を差し伸べてはくれない。
孤独に立ち上がるしかない。
暗闇にいるけれど、死にたくはなかった。

ある日、ふと気付いた。気付かされた。
この真っ暗な世界。
目を瞑っていただけだった。
耳を塞いでいただけだった。
手を差し伸べてくれないのは手をポケットに入れていたからだ。
こんなにも。
こんなにも、世界には光が射しているのに。
どうしてそれから目を背けていたのだろうか。

目を開ければいい。耳を研ぎ澄ませばいい。
ポケットから手を出して思いっきり広げればいい。
たったそれだけで、
暗闇だと思っている世界にも、光が射すのだから。

 

鳥に憧れた。

空を飛べる自由さが、うらやましかった。

跳ねて飛んでみたって、空になんか届きやしない。

掴むのはいつも空気だけ。

空っぽの手の中。僕の心の中。

 

高いところから落ちれば、

鳥のように自由になれるだろうか?

羽がなくても、翼がなくても、

鳥のように、一瞬でも自由になれるのだろうか。

 

こんなに不自由な世界を捨てて、

自由な空を僕は飛びたい。

それはたとえ数秒であっても、

自由になれたのなら僕は、

 

それでいい。