嬉しそうに話す君の横顔が好きだった。

映画を見て一緒に泣いたり笑ったりするのが好きだった。

見終わった後に君と感想を言い合う事が好きだった。

一緒に喫茶店に入って同じものを頼んで飲むのが好きだった。

大きすぎるデザートを二人で分けあって食べるのが好きだった。

寝る前にバカみたいなことをSNSでやり取りするのが好きだった。

遊園地に行って一緒にジェットコースターに乗るのが好きだった。

 

全てが好きだった。たくさんの君とのこと。

 

僕じゃない、君の好きな人の話を聞くのも好きだった。

そうじゃなければ全て好きだなんて言えないから。

 

全てが好きだった。君が。君に関わるもの全てが。

 

僕のことを好きになってもらえなくていい。

報われないかもしれないけれど。

それでも僕は君が好きだから。


「私、幸せだったよ」

 私の声が聞こえる――?

 遠く、遠く彼方に消え去りそうな意識の中で彼を呼ぶ。
 目の前で、うっすら涙を流しながら、私を見下ろす、愛しい私の旦那様。

 ごめんね、約束守れなかったや。
 私は先に逝くけど、あなたはずっとずっと後でいいよ。

 さようなら、私の愛しい人。
 どうかどうか、いつまでも哀しまないで。
 どうか、私の分まで生きて。

 そして、もう泣かないで。
 いつまでも悲しみに暮れないで。

 ――私のいない人生なんてつまらないかもしれないけど、
 私はあなたに生きていて欲しい。
 こんなに短い人生だった私が、うらやむようなーー

 そのニュースは私に電撃を与えた。
「クラスメイトの飛び降り自殺」
 どうして助けて上げられなかったのだろう。

 だけどその理由はわかっている。
 自分の身が可愛かったからだ。自分本位で物事を見過ぎていたのだ。

 私はそのクラスメイトがいじめられているのを知っていた。
 どうやっても助けたかった。「助けてやる」などと、まるで自分が上にいるような感覚で。
 その事に今更気付く。
 助けたこと自体が、その人にとってストレスになっていた。
 自分は何にせよ「見下されている」という印象を与えた。
 それらの可能性は凄く高い。

 誰かを助けた事が、誰かを救った事にはならない。
 本当に救うのならば、相手の意志を尊重せず、自分が正しいと思った事をするしかない。
 それでも救えないときもある。自分の考えが及ばなかった時、間違っていた時。
 何度も繰り返して。間違って。正しい道を選ぼうと足掻く。

 そうだ。悩んでいる暇はない。
 自分を磨いて、そして人を救うのだ。単なる人助けじゃない。救うのだ。

 それをするには仲間がいる。自分一人だけじゃ、全然足りない。
 同じ志を話して、相談して、わかり合って、文字通りの同志が欲しい。

 今はまだ力が足りない。まだまだの自分。
 いつかきっと、目の前にいる人を救えるくらいに――私はなりたい。

 将来、誰かに「どうして君はそんな事をするのか?」と訊ねられれば、こう答える。

「目の前の人くらいは救いたいからです」

 それが私の理由。私が行動を起こすシンプルな衝動ーー

From Mifuyu Naduka