原題はシンプルに
「John」
ジョン・レノンの最初の妻シンシアのジョンとの出会いから別れ、その後ジョンの死後のエピソードまで、彼女の体験と、知り得た話が詳細に綴られています。
ビートルズやジョンをよく知らなくても、シンシアの壮絶な人生の物語としても非常に読み応えのある本ですから、図書館にあったらぜひ借りてみてください。
私はビートルズ大好きでたいていのことは知ってるつもりでしたが、知らないことや、誤解してたことや、知りたくなかったことが満載でした。
そういった部分だけちょこっとご紹介します。
ジョンは偉大な功績を残していますが、プライベートでは決して聖人なんかではなく、人を楽しませる一方で、気分屋でかんしゃく持ちだったようです。
人間ですから、そういうものでしょう。
ただ、これを読んで、ジョンとヨーコはひどいなと感じる方も多いかもしれません。
それは別れた奥さん側からの見方だからと言ったらそれまでですが、彼女はずっと沈黙を守っていて、ジョンの死後25年経って、今まで語られていなかった真実を明かしているのです。
努めて冷静に事実を書いていると思いますし、二人を責める嫌な波動を私は感じませんでした。
最後までジョンを愛していたのです。ただ非常に残念に思っていたことは十分伝わってきます。
ビートルズを壊したのはポールだと思ってる人もいるかもしれませんが、それは結果論で、原因はヨーコですね。そしてヨーコをレコーディングにまで立ち会わせるようになったジョンのせいです。
そこから崩壊していったのです。
でも、それは良い、悪いの話ではなく、必要なことが起きただけだと思います。
たとえヨーコが冷酷な魔女のように思えたとしても。
(全ては一つ、全ては自分ですから責めるのは筋違いですし、この世での単なる役割ですからね)
後半はそんな話になりますが、前半のビートルズ結成からブレイクまでの話は非常にエキサイティングです。
ジョンの生い立ちも壮絶です。
幼い頃に父が失踪し、母親は別の男性と暮らしますが、伯母が役所に訴えてジョンを引き取ります。でも、伯母はジョンをかわいがることはしませんでした。
5歳の時、戻ってきた父親に母親とどちらを取るか選ばされ、父親を選ぶも、泣き出して帰ろうとする母親の元に走ります。父はそのまま国外へ。
でも、結局母親と暮らすことはなく、愛に飢えたまま10代になります。
その後音楽好きな母と一緒にピアノやギターを弾くようになりますが、17歳の時、母親は交通事故で亡くなります。
そんな事情を知ってから聴くと「マザー」という曲の「ママ、行かないで。パパ帰ってきて」というサビの部分がより泣けます。
https://www.youtube.com/watch?v=CEnc3RQE2lg
美術学校でジョンはシンシアと出会いますが、授業もまともに受けない不良のジョンを真面目なシンシアは最初は受け付けません。
これなんて、恋愛ものの典型的なパターンじゃないですか。
シンシアは父親を亡くしていて、母一人、ジョンは伯母一人と暮らしているように境遇が似たとこなんかもまさに。
ビートルズの前がクオリーメンというバンドだったのは知ってましたが、その後シルバービートルズとなってたことは知りませんでした。
名前を変えたのはロックンロールへ転向したから。
ジョンが二つ下のポールと三つ下のジョージを誘ったとこから始まったバンドなので、ジョンがリーダーだったのは当然のことです。
BEATLESもジョンが決めたそうです。かぶとむしのBEETLEをBEATLEに変えたのは、文字をひっくり返すと、「LES BEAT」とフランス語っぽく聞こえるからだとか。
スチュアートがメンバーに入ったのは、ジョンが家を出てスチュの部屋に転がり込むくらい親友だったから。
でも、彼は元々画家志望だったんで、2回目のハンブルグ公演で知り合ったドイツ人の女性と一緒になってやめることになります。でもデビュー前に亡くなります。
デビュー前のハンブルグ公演は苛酷な労働条件で、シャワーもない映画館に全員寝泊まりさせられ、夜中に7~8時間演奏できるよう覚醒剤を飲んでいたようです。
ただ、ドラッグとしてではなく、単に眠気覚ましとして。
デビュー直前のピートベストの解雇の理由は、腕が悪かったからだと思ってましたが、性格の問題が一番で、一人だけリーゼントをやめないし、ユーモアのセンスがなく、気のきいた返しもできないし、たまに代わりに叩いていたリンゴの方がメンバーに気に入られてたということらしいです。
マネージャーになったブライアンエプスタインは、レコード店主で、元々ロックは聴いてなかったんですが、ビートルズがハンブルグで1枚だけ出したシングルレコードを求めるお客がいて、地元リバプールのバンドだと知って興味を持ったとこから始まり、自分からメンバーに契約を求め、彼のマナージメントでデビューが決まっていったようです。
ピートに解雇を伝えたのはブライアンです。メンバーは誰も嫌な役をしたくなかったから彼に押しつけたのです。
デビュー前にシンシアは妊娠し、ジョンと結婚しますが、ブライアンの要請でそれを隠します。
ジョンが結婚して子供までいるのが公表されるのは、世界的に売れてからのことでした。
ビートルズがマリファナを知ったのはアメリカ公演で知り合ったボブディランからでした。
LSDを知ったのはそのあと。あるパーティーで飲物に入れられたのです。
ジョンはそれを気に入り、以後常用しますが、シンシアはその幻覚作用が嫌いでそこから二人の間に少しずつ亀裂が入っていきます。
ビートルズがツアーをやめたのは、演奏しても歓声が凄すぎて誰も音楽聴いていないし、年に二枚のアルバムも作って疲労困憊してたからです。
てっきり楽曲が複雑になってライブでは再現できなくなったからと思ってました。
ただ、そこから時間ができたメンバーがそれぞれ別の方向性へ分かれていくことにもなったのです。
そこでジョージが超越瞑想に出会い、メンバー全員インドまで行って瞑想修行するようになります。
麻薬なんてもういらない、とジョンも夢中になり、シンシアは元のジョンに戻って仲も元通りになると思ってたんですが、その頃ヨーコが登場し、結局そうはなりませんでした。脱麻薬も。
あと知らなかったのは、ヨーコの子ショーンが生まれたあと、音楽活動をやめて主夫をやってたって話ですが、実際はベビーシッターが面倒を見て、ジョンが家事をやってたわけではなさそうでした。
これはジュリアンがたまたま訪問した時に見た話なので、もしかしたら、そうじゃない時もあったのかもしれませんが。
ちなみに、ジュリアンも5歳で父と別れますから、ジョンは自分の父親と同じことをやってたようです。
これは2005年に出た本で、もうシンシアも亡くなっていますが、ビートルズやジョンが好きな人は必読ですね。
9にまつわる話や、ジョンの作曲風景、ポールとの共作がどんな感じだったのか、キリストより有名発言の真相など、まだまだ興味深い話満載ですよ。
「John」
ジョン・レノンの最初の妻シンシアのジョンとの出会いから別れ、その後ジョンの死後のエピソードまで、彼女の体験と、知り得た話が詳細に綴られています。
ビートルズやジョンをよく知らなくても、シンシアの壮絶な人生の物語としても非常に読み応えのある本ですから、図書館にあったらぜひ借りてみてください。
私はビートルズ大好きでたいていのことは知ってるつもりでしたが、知らないことや、誤解してたことや、知りたくなかったことが満載でした。
そういった部分だけちょこっとご紹介します。
ジョンは偉大な功績を残していますが、プライベートでは決して聖人なんかではなく、人を楽しませる一方で、気分屋でかんしゃく持ちだったようです。
人間ですから、そういうものでしょう。
ただ、これを読んで、ジョンとヨーコはひどいなと感じる方も多いかもしれません。
それは別れた奥さん側からの見方だからと言ったらそれまでですが、彼女はずっと沈黙を守っていて、ジョンの死後25年経って、今まで語られていなかった真実を明かしているのです。
努めて冷静に事実を書いていると思いますし、二人を責める嫌な波動を私は感じませんでした。
最後までジョンを愛していたのです。ただ非常に残念に思っていたことは十分伝わってきます。
ビートルズを壊したのはポールだと思ってる人もいるかもしれませんが、それは結果論で、原因はヨーコですね。そしてヨーコをレコーディングにまで立ち会わせるようになったジョンのせいです。
そこから崩壊していったのです。
でも、それは良い、悪いの話ではなく、必要なことが起きただけだと思います。
たとえヨーコが冷酷な魔女のように思えたとしても。
(全ては一つ、全ては自分ですから責めるのは筋違いですし、この世での単なる役割ですからね)
後半はそんな話になりますが、前半のビートルズ結成からブレイクまでの話は非常にエキサイティングです。
ジョンの生い立ちも壮絶です。
幼い頃に父が失踪し、母親は別の男性と暮らしますが、伯母が役所に訴えてジョンを引き取ります。でも、伯母はジョンをかわいがることはしませんでした。
5歳の時、戻ってきた父親に母親とどちらを取るか選ばされ、父親を選ぶも、泣き出して帰ろうとする母親の元に走ります。父はそのまま国外へ。
でも、結局母親と暮らすことはなく、愛に飢えたまま10代になります。
その後音楽好きな母と一緒にピアノやギターを弾くようになりますが、17歳の時、母親は交通事故で亡くなります。
そんな事情を知ってから聴くと「マザー」という曲の「ママ、行かないで。パパ帰ってきて」というサビの部分がより泣けます。
https://www.youtube.com/watch?v=CEnc3RQE2lg
美術学校でジョンはシンシアと出会いますが、授業もまともに受けない不良のジョンを真面目なシンシアは最初は受け付けません。
これなんて、恋愛ものの典型的なパターンじゃないですか。
シンシアは父親を亡くしていて、母一人、ジョンは伯母一人と暮らしているように境遇が似たとこなんかもまさに。
ビートルズの前がクオリーメンというバンドだったのは知ってましたが、その後シルバービートルズとなってたことは知りませんでした。
名前を変えたのはロックンロールへ転向したから。
ジョンが二つ下のポールと三つ下のジョージを誘ったとこから始まったバンドなので、ジョンがリーダーだったのは当然のことです。
BEATLESもジョンが決めたそうです。かぶとむしのBEETLEをBEATLEに変えたのは、文字をひっくり返すと、「LES BEAT」とフランス語っぽく聞こえるからだとか。
スチュアートがメンバーに入ったのは、ジョンが家を出てスチュの部屋に転がり込むくらい親友だったから。
でも、彼は元々画家志望だったんで、2回目のハンブルグ公演で知り合ったドイツ人の女性と一緒になってやめることになります。でもデビュー前に亡くなります。
デビュー前のハンブルグ公演は苛酷な労働条件で、シャワーもない映画館に全員寝泊まりさせられ、夜中に7~8時間演奏できるよう覚醒剤を飲んでいたようです。
ただ、ドラッグとしてではなく、単に眠気覚ましとして。
デビュー直前のピートベストの解雇の理由は、腕が悪かったからだと思ってましたが、性格の問題が一番で、一人だけリーゼントをやめないし、ユーモアのセンスがなく、気のきいた返しもできないし、たまに代わりに叩いていたリンゴの方がメンバーに気に入られてたということらしいです。
マネージャーになったブライアンエプスタインは、レコード店主で、元々ロックは聴いてなかったんですが、ビートルズがハンブルグで1枚だけ出したシングルレコードを求めるお客がいて、地元リバプールのバンドだと知って興味を持ったとこから始まり、自分からメンバーに契約を求め、彼のマナージメントでデビューが決まっていったようです。
ピートに解雇を伝えたのはブライアンです。メンバーは誰も嫌な役をしたくなかったから彼に押しつけたのです。
デビュー前にシンシアは妊娠し、ジョンと結婚しますが、ブライアンの要請でそれを隠します。
ジョンが結婚して子供までいるのが公表されるのは、世界的に売れてからのことでした。
ビートルズがマリファナを知ったのはアメリカ公演で知り合ったボブディランからでした。
LSDを知ったのはそのあと。あるパーティーで飲物に入れられたのです。
ジョンはそれを気に入り、以後常用しますが、シンシアはその幻覚作用が嫌いでそこから二人の間に少しずつ亀裂が入っていきます。
ビートルズがツアーをやめたのは、演奏しても歓声が凄すぎて誰も音楽聴いていないし、年に二枚のアルバムも作って疲労困憊してたからです。
てっきり楽曲が複雑になってライブでは再現できなくなったからと思ってました。
ただ、そこから時間ができたメンバーがそれぞれ別の方向性へ分かれていくことにもなったのです。
そこでジョージが超越瞑想に出会い、メンバー全員インドまで行って瞑想修行するようになります。
麻薬なんてもういらない、とジョンも夢中になり、シンシアは元のジョンに戻って仲も元通りになると思ってたんですが、その頃ヨーコが登場し、結局そうはなりませんでした。脱麻薬も。
あと知らなかったのは、ヨーコの子ショーンが生まれたあと、音楽活動をやめて主夫をやってたって話ですが、実際はベビーシッターが面倒を見て、ジョンが家事をやってたわけではなさそうでした。
これはジュリアンがたまたま訪問した時に見た話なので、もしかしたら、そうじゃない時もあったのかもしれませんが。
ちなみに、ジュリアンも5歳で父と別れますから、ジョンは自分の父親と同じことをやってたようです。
これは2005年に出た本で、もうシンシアも亡くなっていますが、ビートルズやジョンが好きな人は必読ですね。
9にまつわる話や、ジョンの作曲風景、ポールとの共作がどんな感じだったのか、キリストより有名発言の真相など、まだまだ興味深い話満載ですよ。