ディックの本ですが、私にとってまさに今読むべき短編集でした。

スピ系の本をいろいろ読み、変性意識体験をしてる人じゃないとわからないであろう話が最期のエッセイに書かれていたからです。

エッセイは「人間とアンドロイドと機械」と題されてますが、かなり難解です。たぶん、昔なら全くわからなかったでしょう。でも、今ならよくわかります。右脳と左脳の違いや、大きな時代の移り変わり、など最近よく言われている話やプラトンやユングの話など、コアなスピ話満載でした。

彼はやはり悟りを開いていました。

でも、神秘体験をする以前に書かれたものは夢の体験を元にしたものが多いようで、最初からあちらの世界からのメッセージを受けていたようです。

最初の頃から、この現実世界が歪んで別の世界に変わっていったり、自分が何者かわからない、何か真実が隠されているようだ、といったテーマのSFが多いのです。

それ以外にも個人的に驚いたことがありました。

ディックの本によく出てくるプロキシマ星系って実際にあるのかな、と調べてみたら、正式にはプロキシマ・ケンタウリという名で、太陽系に一番近い恒星だそうです。

実は元々そんなに宇宙に興味なかったので、星座もよく知らないんです。星を見るのは好きでしたけど。

しかし、この星、なんとケンタウルス座にあるそうです。

ここでもケンタウルスか。

私がディックの本に惹かれたのは必然なのかな。

ディックを読み始めたのは、スピ系の本を読む前でしたけどね。

ちょっとビックリです。

しかも、この短編集に出てくる映画「クローン」の原作「にせもの」では、自分は人間だと思っているロボットが出てきます。
見た目も記憶も人間なんですよ。

中山さんから、「サイボーグは自分がサイボーグだってわからないから」って言われましたが、まさにそんな話。

「クローン」はかなり原作に忠実に映画化されてましたが、表題の「アジャストメント」は設定だけで内容は全然違いました。

原作では主人公は結婚してますが、映画では出会いから始まります。

原作もなかなかいいですが、短編ですし、映画の方が面白いかな。

運命を調整する存在が出てくるところだけが共通ですね。

ヘミシンクの世界でも、ガイドやF27のヘルパー達がそういう仕事をしてたりする話が出てきますし、やっぱディックはわかってます。


クローン以外に「電気蟻」という有機ロボットの話がありますが、これも自分は人間だと思っていたという話ですが、奥が深いです。
自分が見てる現実はあらかじめプログラムされたもので、実際には存在しないんじゃないか、というもの。

「凍った旅」では、過去の記憶を何度も再体験する話ですが、その度に最初は初めてのように体験しますし、自分の抱えている罪悪感にとらわれて新しい体験を拒否し、同じ結末を繰り返したりします。
カルマや輪廻の話を示唆していますよね。

他にもたくさん収録されてますが、私がスピ系の話を知らなかったら、純粋にSFとして楽しめたであろう作品群です。

これはお勧めです。

マット・デイモン主演で映画化されたあとに、再編集されたものなので、図書館とかにもあるんじゃないでしょうか。

ぜひ、読んで欲しい、と思います。