5月20日。
朝、車で会社へ向かっていた時だった。急な坂道でアクセルをふかすと少しホイールスピンした。

そのあと感じたのが異常な振動。 エンジン音に普通とは違う低い音が混じっている。
なんかおかしい、と思ったのと同時に坂の頂上に出る。標識に従い一旦停止すると、そこでエンスト。
とりあえずエンジンを切ってかけ直し、しばらく走り、低速になるとまた止まった。

信号待ちでも止まり、その都度エンジンをかけ直すが、アイドリングが不安定で非常に調子悪い。

4,5回エンストを繰り返しながら、なんとか会社の駐車場に着いたが、とうとうエンジン警告ランプまで点灯する始末。これはやばい。
タイムカードを押してすぐに会社を出て、近くのディーラーに持っていき、診てもらう。

その間に、ランランさんにメールした。

鉄さんが昨日、「今日は眠れるかも」と言っていたのは、一昨日の夜もなかなか眠れなかったからなのだ。昼間はヒーリングであんなに元気になっていたにも関わらず。
だが、鉄さんは遠慮してその日ランランさんには連絡しなかったという。
そんな時は連絡した方がいいと奥さんに伝えていた。ランランさん自ら「遠慮しなくていいから」と言っていたし。それで、昨日はどうだったのか気になっていたのだ。

「鉄さん、やはり夜眠れないようです。昨日連絡はありませんでしたか?」

すると、すぐに返事が来た。

「昨夜、奥さんから連絡頂きました。遠隔をしばらく送りました。
鉄さん眠気がきたとの事でしたのでそのまま寝てもらいました。
今日もまた遠隔送ります」

連絡してたし、眠れたようだ。

安心してたところに整備士の方がやってきた。

エンジンにエアを送るホースが外れてただけだったとのこと。振動で少しずつネジがゆるんでいったのだろう。エンジントラブルではなく、外れてたのがセンサーの先だったから警告灯がついたらしい。

ネジを締めなおしただけだから、と無料だったし、それほど時間も取られなかったのでラッキーだった。

これで車もひと安心。明日は鉄さんとこに行ったあと、そのまま車で港区まで行かなきゃならない。今日で本当に良かった。明日はディーラーの定休日なのだ。




5月21日。
午前中に日記をアップした。

「鉄さんのためにお祈りいただいている皆様へ。
彼が元気になった記事やつぶやきを見てることと思いますが、あれはヒーリング後の一番調子のいい時の話です。やはり波があります。厳しい状況に陥る時もあります。引き続きお祈りをよろしくお願いします。
今日は夕方『祈り』の白鳥監督を囲むお茶会に行くので、そこでもお祈りをお願いしてこようと思います」

昼食を済ませ、予定より遅れて午後2時頃に家を出た。
鉄さんちに向かう途中で医薬品の重曹を買う。昨日ネットでこういう文章を読んだからだ。

「癌は水虫用の内服薬で治る。でも、腎臓に負担がかかるから末期の人には使えない。でも重曹なら末期の人にも大丈夫」

早速検索してみると、

「殆どのガンは重曹で治る。
余命数ヶ月といわれていた肺ガンの患者さんは、この重曹で救われ既に15年生きている」

という心斎橋の歯医者の先生がいて、これまでに何人も治されてるという。

それを一九八三年に発見したイタリアの医師トゥリオ・シモンチーニは医療組合から除名されたそうだが、

「数ヶ月かかる場合もあるが、簡単な乳がんなら数日で十分」

と言っている。やはり末期癌の患者を数ヶ月で治している。

ちなみに、普通の重曹は重炭酸ナトリウム(炭酸水素ナトリウムが別名)以外の物質も加えられてるので、掃除用の重曹などは飲むものではない。

ドラッグストアでは炭酸水素ナトリウムが胃腸の薬として売られていて、500g398円くらいで買える。保険証使わずにこの値段。安い。
高額の抗がん剤治療を進める勢力が全力で潰しにかかるわけだ。

重曹を買ったあと、鉄さんち到着三十分前くらいに電話したが出なかった。

普通はすぐに折り返してくる。
だが、いつまでたってもかかってこない。

今日で鉄さんに会うのは18回目になるはずなのだが、まさか何かあって会えない状態になってるとか?

不安な気持ちに襲われたが、考え直した。

いや、手元に携帯を置いてなくて取れないか、寝てるのかもしれない。もしそうなら起こしてはいけない。かけ直すのは到着直前まで待つことにしよう。

30分後に駐車場に着いた。もう一度電話する。

だが、やはりコール音を繰り返すのみ。どういうことなんだ?

いったん切ろうかと思った時、「はい」と声がした。

それはしかし、鉄さんではなく、奥さんの声だった。

なぜ鉄さんが出られないんだろう? 一瞬嫌な予感が頭の中を駆け巡る。

だが、それは杞憂だった。

なんと、聖子さんが来てクリスタルボウルの演奏をしてくれていたとのこと。

日曜に会った時、聖子さんに鉄さんの現状を話したので、来てくれたのだ。

私が到着すると、クリスタルボウルを片付けてるとこで、

「演奏が終わった途端に電話がきた」

と旦那さんのカツさんに言われた。

最高のタイミングだったようで、最初の電話は奥さんも気づかなかったそうだ。 たぶん、マナーモードにしてたんだろう。

しかも、聖子さん達はこのあと別の予定があるということで、ちょうど入れ替わり。

聖子さんの演奏を聞きながらカツさんのヒーリングを受けた鉄さんは「夢のようだ」と泣いていた。

不思議な話だが、最初ラの音のクリスタルボウルの音が鳴らなくて、後半ようやく鳴るようになったそうだ。
それとともに鉄さんの呼吸も楽になったとのこと。
どうやらラの音と呼吸が関連してるらしい。


2時に到着するつもりが、いろいろあって出発が遅れ、3時になってしまったが、かえってそれが良かった。

聖子さんたちはこれから予定があり、そのあと白鳥監督のお茶会に行くらしい。

「この前、ケンタさんに『鉄さんとこに行けないか?』って言われたでしょ。ちょうど、今日このあとリハーサルがあって、その前に時間が空いてたので、お伺いすることにしたんです」

「いやぁ、まさか来てるとは思いもしなかったんでビックリしましたけど、いいタイミングだったんですね」

日曜日、聖子さんに声をかけていて良かった。

クリスタルボウルの運び出しを手伝い、「じゃぁ、また夕方」と聖子さん夫婦を見送ったあと、部屋に戻る。


時間がないので急いでテルミーの準備をしていると、鉄さんが口を開いた。

「ケンタさん、今朝、日記に書いてくれたでしょ。あれ、ホント嬉しかったです。元気な時の写真しかアップしてないから、元気になって良かったですね、とか言われるんですけど、『この時だけなんだよ、全然元気じゃないんだよ』と言いたかったんです。だから、ホントありがとうございます」

「できればもっと早く鉄さんの苦しい状況を書いて、皆さんにさらなる祈りを求めたかったんですが、どう書いていいかわからなくて。でも、あれくらいならいいかと思いまして」

鉄さんが喜んでくれて私も嬉しい。


テルミーも三回目になると、結構慣れてきて楽にかけられるようになってきた。やはり慣れていないと疲れる。
実際土日ハードだったせいもあり、疲れがたまっていたので、今朝はなかなか起きられなかった。今日休みにしていて正解だ。

また足の裏の指圧から始めたが、ツボを奥さんに教えた。腰や肺の反射区を。

「手じゃ疲れるので、指圧棒があればいいんですけどね」

すると、奥さんが「持ってます」と言って、15センチほどの小さなすりこぎのような棒を持ってきた。「これでいいですか?」

「これです。これだと、そんなに力がいらないですから、奥さんでもできますよ。今度反射区の図解や症状別のツボが書かれた本持ってきますね」

足裏に熱を入れたあと、時間がないのでまた背中に移る。

鉄さんの背中にはコンニャクびわの葉温湿布の跡があちこちにある。色素が沈着してるのかもしれない。一部ヤケドしてる部分もあり、誤ってそこをこすってしまったが、そこには煙を吹きかけ灰をつけておいた。薬草の線香なので、煙や灰にも治療効果があるのだ。喉が痛い時、煙を吸って喉に当てるだけで痛みがとれたりもする。

施術は予定どおりの時間で終わったが、途中鉄さんは寝ていた。それなのに、私はそれに気づかず話しかけてすぐ起こしてしまっていた。
寝るのはとてもいい治療が出来てる証拠。
暖かくなって血行が良くなって眠くなるのはよくあることなのだ。

ランランさんの最初のヒーリングの時も寝てたが、鉄さんは以前は痛みが強くて眠れず、最近は痛みはほぼ無くなったものの、呼吸が苦しくて寝られない状態だったという。

せっかく寝てたんで、もっと寝かしてあげれば良かった。

「鉄さん、良かったら、今度の土曜か日曜も来ますよ。どっちがいいですか?」

「土曜は長女の運動会で妻がいないので、できれば土曜がありがたいです」

「わかりました。じゃぁ、土曜日また来ますね。今度は寝てたら起こしませんから。あっ、そうそう」私はリュックから重曹を取りだした。「これガンに効くらしいんです」

ネットで調べた話をすると、鉄さんは目を丸くした。「そんな治療法があるんですか」

重曹の話は知らなかったようだ。

「水に溶かして飲むだけでいいみたいです。しかも安いです。これで300円くらいですから」

「そうなんですか。ありがとうございます。早速飲んでみますね」

喜んでくれたが、彼も新たな治療法を見つけていた。当り前かもしれないが、人任せではなく、自分でもなんとかしようと必死なのだ。

食事療法なのだが、今までと違う指導をしてくれるお医者さんがいて、二日後の木曜にそこで診察の予約を取ったとのこと。
私が「原始人食」の指導してるお医者さんの話をすると、どうもそっちの系統で、玄米菜食ではなく、肉が食べられるらしい。

新宿に病院があり、行くのを楽しみにしていた。お兄さんが車で連れていってくれるそうだ。

「そこの先生は腹水を抜いて濾過して、翌日必要なものだけ体内に戻す治療をやってる先生が知り合いにいて、紹介してもらうことになりました。腹水抜いた日は体調良くなってラーメン完食しちゃうっていう患者さんの話もありましたよ」

無類のラーメン好きの鉄さんは嬉しそうに話した。今はほんの少ししか食べられない状態なのだ。


それから私は港区の会場に向かったが、鉄さんは聖子さんがクリスタルボウルの演奏を自宅でしてくれてる場面を奥さんに撮ってもらっていたようで、写真をアップしてつぶやいていた。

「感謝感激です。病気になって良かった」


昨日、会場近くの駐車場をネットで調べ、一番近くて安いとこを見つけたので、そこを一台分リーボール張って(エネルギーの膜で覆うこと)イメージ上で予約しといた。
都心の駐車場はバカ高い。昔、半日で8千円取られたこともあったので、それ以来事前にチェックしている。

ただ、鉄さんちから予定どおり二時間弱で近くまで来たが、どうしても地図にある道路を見つけられず、目的の駐車場にたどり着けない。とりあえず、ちょっと離れたところに停めた。 もしかしたら、もう無くなってるのかもしれない。

お茶会というので、ご飯は出ないだろうと途中で買ったカレーを車内で食べ、まだ時間に余裕があったので、当初予定してた駐車場を徒歩で探しに行く。

すると、ここ車通っていいの? と躊躇してしまうような石畳の道を曲がった先にその駐車場は確かに存在していた。しかも二台空いている。

急いで走って車のところに戻ると、手前の駐車場に車を停めたばかりの人がいた。

「ケンタさん」

車から出てきた女性に声をかけられる。 振り返ると聖子さんだった。

「あっちに、もっと近くて安い駐車場があるので、移動します」

というと、聖子さんたちも再び車に乗り、すぐに跡をつけてくる。

二台ともまだ空いていた。停めたのが開始10分前。

聖子さんと私はまたまたナイスタイミングだった。


会場に着くとビールと小さなお弁当が席におかれていた。弁当出るんじゃん。言ってよねぇ。 もちろんビールは飲めないので、妻へのおみやげにして、私はお茶をいただく。
ただ、お弁当の蓋が開かず、力を入れて引っ張ったら、中身が半分飛び出してテーブルや足元のカバンの上にぶちまかれた。
なんてこった。おっちょこちょいではあるが、さすがに私もこういう失態は初めてだった。
大いに焦ったが、参加者はみんな立派な大人なので誰からも冷たい目で見られることはなかったのが幸いだった。

自己紹介で一人一分ずつということだったが、長く話す人が続出し、私が話す頃には「時間です」と書かれた紙が掲げられるようになり、結局時間切れで祈りの依頼は叶わなかった。

でも、私が末期ガンの友人と一緒に映画を観たと話したからなのか、最後に自己紹介した主催者の方はこう言った。

「末期癌の治療法は80年前に見つかっていて、16人中16人が完治したんです」

周波数治療だそうで、ロイヤル・レイモンド・ライフ博士が発見したという。

すっかり忘れていたが、実はその博士の話は昔本で読んだことがあった。この時は徹底的に弾圧されて研究成果も持ち去られ、研究所は放火されている。残念な話だ。

ニコラ・テスラは科学の分野での、この方は医療の分野での大天才だと思うが、どちらも同じような末路をたどっている。本来なら偉人伝で小学校の図書館にあってもおかしくないほどなのだが。

最後は白鳥監督の講演を聞く。予想以上に素晴らしい話だった。
講演が終わったあと、彼が脳腫瘍で死にかけたところから生還した時にやったという祈りを、全員で一緒にやった。祈りというよりワークのようだったが、これはきっと鉄さんの役に立つはずだ。今度直接詳しく伝えてあげよう。


この会合には昭和さんとKANさんも来ていたので、土曜にお見舞いに行かないか誘うと二人とも行くと言ってくれた。

だが、家に帰ったのが夜遅かったので、次の日に鉄さんにメッセージすることにした。




5月22日。
「調子はどうですか?
土曜日ですが、11時に聖蹟で待ち合わせて弁当持参で昭和さんとKANさんの三人でお伺いします。
食事してしばらくしたらテルミーをしようと思います。
他の二人が何時までいられるかわかりませんが、私は運動会が終わるまではいるつもりです。

ところで、昨日の白鳥監督のお茶会では祈りの依頼はできませんでした。自己紹介で話すつもりでしたが、時間切れになってしまいました。
でも、素晴らしい話が聞けましたので、今度シェアしますね。きっと参考になる話があると思いますから」

その後昭和さんから行けなくなったとの連絡が来たので、続けてメッセージを送る。

「昭和さんからメールがきて、スケジュールを勘違いしていて土曜は司会の仕事が入っていて来れない、ということです。とりあえず二人でお伺いしますね」


しかし、鉄さんからメッセージが返ってくることはなかった。