誰もが助言し,
誰もが母に忠告した
「離婚」という選択を、
かたくなに拒否しつづけた母。
そのときの私には
まだ子供すぎてわからなかったけど。
そしていまでも
「あのときに別れようとはおもわなかったの?」
という私の問いに
母はただコロコロと笑うだけで
答えてくれようとはしないけれど
自分の財産をすべてつぎ込んでまでも
一緒に働いてきた「仲間」を守ろうとした父。
そんな父を
月並みだけど
誰よりも愛していたことだけは
「大切な人」を得た今の私なら理解できるのだ。
そして
気の遠くなるような莫大な借金と
後に唯一の父の宝物となった
社名の入った金属製のプレートだけが残った。
頑固で正直者の父は
周囲の誰もが薦めた破産宣告をすることもせず、
この後(のち)、
実に20年以上かけてこの借金を返済していくことになる。
父、46歳。
母、43歳。