ページを一度めくっただけで
二十分の時間が流れている
全ての景色には追いつけないからこそ
感じるものを選りすぐって
息をする阪急電車の私
何十年も生きているのに
起きていればお腹が空くことすら
知らないような無知な人が
口を開けて観ている民放より
野球中継がうんと好きな私は
七回の表から
コンセントすら抜いている
部屋のテレビを久しぶりにつけた
定型文のような解説の言葉と
刺々しい実況の言葉は
とてもアンバランスで
不安定なものも重なり合えば
安定するように、心地よい
夕暮れ時に漂う家々の
夕ごはんの匂いに
いつからこんなにも
苦しく愛おしく
思うようになったのだろう
何も踏みしめていない
何にも触れていない
誰も触れていない
生まれたての
無垢な私のいつかの命と一緒に
夕暮れ時の夕ごはんを
囲みたい 囲みたい 囲んでみたい
待っていて、ね
時も、場所も、色も違う
私の住むところにも
あなたの住むところにも
咲いていた紫陽花
感じたものも全部一緒に
食卓に並べられたら
どれだけ幸せだろう
世界中の夕暮れを思う
世界中の夕ごはんを思う
そしてそれらのことを思っていると
起きていると
お腹が空くことさえ
忘れてしまう
そうだ
おやすみなさい


