Falling Fast -2ページ目

Falling Fast

自分の言葉に溢れたい



「けいこは 時間を守って えらいね」
おばあちゃんの家にあがった その瞬間
そう言って抱きしめられたわたしは
言葉が出てこなかった

「ところてんはあまり好きじゃないの」
ところてんだけ残しちゃったけど
たけのこの煮付けに大きなわかめ
けいこが来るまでに取っておいたの
と 口の中でとろける牛肉も、たまらなかったな

家の中で綺麗に咲いたあじさい
またすぐに見に行くね




「愛しかない」という友と夜を越える
ベッドに吹く風で わたしたちは 息をする
彼女の幸せの定義を知ってしまったのだ

「目玉焼き と スクランブルエッグ
どちらがいい? 」
それはそれは 紅い卵を三つ掻き混ぜて
クロワッサンに添える

ショパンを聴きながら
朝ごはんを食べればよかったと
彼女が忘れていった文庫本を
手に取って、ピアノの音色を、思う

洗濯物を取り入れながら
「なんて、美しい日々
デニムの青が 色移りした 白い靴下さえも」
と声に出すわたしを
多分、誰も目にしたことがない

「わたしの幸せの定義の中にある
愛する人の好みを聞きながらつくる朝ご飯」

ひとりごとは ひとりの時にしか言わないの




一生忘れないと思っていたのに
二十六歳にして 忘れてしまったこと

心臓をじわりじわりと突き上げてくる
わたしの「いま」という幸せが押し寄せてくる

君がくれた ジャスミンティー
感性だけじゃ推し量れない愛

帰らなくちゃ、大好きな家に
美味しいご飯と声が待っている

わたしは君を 思い出す「旅」に出るのだ