【幻想物語 第1章 第5話】 | 毎日きびきび

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遂に大学生。
気を引き締めていきたいですね。

これまで出会えた全ての人に感謝を。
これから出会っていくであろう全ての人に感謝を。

こんばんわ!!


今だに「こんばんわ」なのか「こんばんは」なのか分からない式神です




さてさて!!


さーて、【幻想物語 第1章 第5話】ですアップアップ



では、スタート!!



幻想物語


第1章 第5話




耳を貫く轟音と、体を揺らす振動が治まると、校舎の反対側で爆発が起こる。

そんなことを5分以上繰り返し、まともに歩けるまでにかなりの時間を要した。



崩れる瓦礫の上を慎重に歩きながら、おぼつかない足取りで教室へと向かう。


しかし校舎内があまりに荒んだ状態だったため、どこに何があったかはすでに分からなくなっており、勘と方向感覚だけで歩いていた。


辺りを見回し、改めて溜め息をつく。


「・・・・・ここまでやるか?フツーじゃねぇな・・・・」



歩みを止め、担任や生徒の名前を口に出そうとしたが、すぐに声をひっこめた。

ここで大声をだすことは自殺行為だ。それに気付いたのだろう。



綺麗だった校舎は荒れはて、最新の防犯設備もことごとく破壊されている。

辺りからはホコリと血と錆の匂いが漂い、肌に突き刺さるような冷たい空気だった。



やっとの思いで自分の教室を探しだし、後方のドアから中の様子を窺う。

黒いスーツを着た男が2人、その脇には若い女、その3人の前には身長2mはある大男が立ちはだかっていた。


イルダの連中だ――そう思い、再び教室内を見回す。


瓦礫の中に倒れている人影が・・・・・3人。

身長から見て生徒だ。


レナはどこだ――そう思って教室中を見渡したが、レナの姿は見当たらなかった。

恐らくは瓦礫の影にいるのだろう。


『とにかく、今はここから離れて、警察と軍を呼ぼう』

考えがそこに至り、後ずさりする。


しかし、前方のイルダの連中ばかりに気を取られていたせいか、背後にあった瓦礫につまずき、ガラガラを大きな音がでてしまう。


「誰だ!!」大男が怒鳴り、教室からでてくる。

その黒く光った瞳がライナをとらえた瞬間、口がこれでもか、というほどに大きくつりあがる。




教室内に連れ込まれ、床に叩きつけられる。

「かはっ――」当たり所が悪かったのか、うめき声を上げる。


大男の後ろ側にいた男のうち、左側の男が口を開いた。

「あ、アニキ、こいつが・・・・ギルス様を・・・・・」


「あぁ、そうだ。ギルス様を病院送りにした男だ。」



大男がライナを見下しながら言った。

「おぉ、自己紹介がまだだったな。俺の名はキース。キース・イルダ。ちなみに、左がアルベルト、右がアトラス、そんで、こっちの女がマーサだ」



「――てねぇよ」声がかすれる。


「あぁ?なんつった?」


「聞いてねぇっつったんだよ。その年で難聴か?」


その言葉を発した瞬間、キースと名乗った男の左足がライナの下腹部に吸い込まれ、鈍い音をたてる。


「自分の置かれた状況が理解できていないようなだな。まったく、愚かなやつだ」


キースが左手を掲げ、ゆっくりと詠唱を唱え始めた。


「汝、破壊される者。我、破壊する者。死を司る神、タナトスよ、汝の宝剣リリールにて眼前の者を消し飛ばせ。我に勝利よ、汝に死を、この世に混沌と絶望を!!」


  リリール・オブ・タナトス

「死聖宝剣!!!」



掲げられた左手の周りの大気が歪み、剣を形どる。


「俺達イルダに逆らうとどうなるか、あの世で永遠に後悔しろ!!!」



左手の剣が振り下ろされ、ライナに迫る。


教室にいた誰もがライナの死を確信した。そう、ライナ本人でさえ・・・・・



次にライナが目を開けると、目の前には血まみれの担任が立っていた。


剣は彼の右胸に深々と突き刺さり、ライナの眼前数㎝のところで止まっていた。



「せ、せ、先生?先生!!何やってんだよ!!」



ライナの問いかけに、消えて無くなりそうなほど小さな声で彼が答えた。


「生徒の不始末を処理すんのが担任の役目、だろ?」



教室の隅でおびえていた生徒が全員飛び出し、担任に駆け寄る。


先生!先生!おい、起きろよ!様々な声をかけるが、彼らの担任はぐったりしたままだった。

息も小さくなり、脈は今にも消えてしまいそうだった。



「はっ!馬鹿な奴だ!!自分の命より生徒の命を守ったか!!殊勝な心がけだな!だが、それが命取りだ。」


大声で笑うキースの前でライナが立ち上がった。


「おう?どうした?そいつの仇でもとるのか?やめとけ、お前らが束になってかかってきても、俺らは倒せねぇ。恨むならそこにいるライナとかいう餓鬼を恨め。そいつが全ての元凶だ。」



「――をした」


「あぁ!?聞こえねぇんだよ」


「先生がお前ら何をした!!!」

叫ぶと同時に、ライナの周りの大気が大きく歪む。



「これ全部お前の魔力(ディーガ)か?大したもんだな」



「皆、今日ここで見たことは誰にも言わないでくれ。」

キースの言葉をよそに、魔法を唱える。



  エターナル・サイフォス

「聖なる再生」



魔法名を唱え終わると同時に、まばゆい光がライナから放たれ、担任の体を包む。


「何してんだ?そいつはどんな回復魔法を使ったってもう助からねぇぞ?血が出過ぎてる」


キースの言葉をあざわらうかのように、ライナが言う。

「こいつは『回復魔法』なんかじゃねぇよ。ちなみにいうと、『治癒魔法』でもねぇ。こいつはな、『再生魔法』だ。」



「再生・・・・魔法だと・・・・・?」


「その通り。回復魔法は文字通り、傷周辺の細胞を活性化させて治癒を早める魔法だ。治癒魔法も似たモンだよ。ただし、再生魔法は違う。人間が生まれ、成長する過程で刻まれる遺伝情報――つまりゲノム構造を読み取り、その情報に沿った個体を創り上げる。つまり、傷があればそれは消え、血が足りなきゃ、その分は規定値まで戻り、再生される。それが、『再生魔法』だ」


ライナが話しているうちも、担任の体をまばゆい光が包んでいる。


すぅっと光が消え、担任の全身が確認できるようになると、その場にいた全員が驚きの声をあげた。


傷は消え、辛そうだった表情は和らいでいる。



「治った・・・・・だと?」


「『治った』じゃなくて『戻った』だけどな。聖なる再生(エターナル・サイフォス)はランク10指定の禁術だよ。十数種類存在する『聖なる魔法(エターナルシリーズ)』は全て禁術指定。こいつはその一つだ。」息を荒くしたライナが説明する。



「なん・・・・・で?キースの死聖宝剣(リリール・オブ・タナトス)は深淵の魔力(ディーガ)を使ったランク9の魔法よ?それが・・・・・こんな簡単に・・・・・・」マーサという名の女は、膝を落とし、明後日のほうを見つめていた。



「立て、マーサ。なんにしたって、この魔法一回だけでここまで息が乱れてる。次で決めるさ。」



「おい餓鬼。次の一撃はどうする?防ぐか?見たところ、もうそいつらを守る力は残ってねぇみたいだけどな。悪いが、ボスの命令なんだ。俺達イルダに逆らう者は女だろうが子供だろうが生かしておくなってな。」キースの口元が再び大きくつりあがる。


キースは大きく息を吸い込み、詠唱を唱え始めた。

「今こそ我の力を示す時!憤怒・傲慢・怠惰・絶望・虚無・嫉妬・全ての負よ、我にあだなす者に死の制裁を!!!」



    カオス・エンペラー・メテオ

「暗黒死帝龍弾!!!」


魔法名を唱え終わると同時に、掲げられた左手の上に赤黒い光が集まり、球を形どる。辺りのものは熱せられ、高温となる。


「この禁術で、蒸発して消し飛べ。」


キースの言葉を聞き、重い体に鞭打ち、ライナは立ち上がった。


「お?まだやるか?諦めろ。所詮お前みたいな餓鬼じゃイルダ相手は務まらん。お前じゃ守ることなんざできねぇさ。」キースの嘲笑する声が頭に響く。



掲げられた左手の火球が手を離れ、ライナに迫る。


ライナの死へのカウントダウンが始まった。

始まりから終わりまではホンの一瞬だが、このときだけは妙に長く感じた。


絶望と破壊の象徴である火球が迫る。

おぞましいほどの高温を放っているにも拘らず、ライナは寒気すら感じ、鳥肌が立っていた。




動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け動け



俺が・・・・防がなきゃ・・・・護らなきゃ・・・・・この・・・・居場所を!!!

動けよ、俺の体!!出ろよ、魔力(ちから)!!こんなとこで死ぬのはごめんなんだよ!!!



『力を・・・・・・貸してやろうか?』

その声は突如として、ライナの意識に直接語りかけてきた。


『お前に死なれちゃ俺が困る・・・・・だから、力・・・・貸してやる』


『誰だ!?』

誰に習ったわけでもないのに、その語りかけてくる声と意識の中で会話をしていた。


『誰だ?だと?おいおい、今さらンなこと言ってんじゃねぇぞ。一応教えといてやる・・・・俺の名は・・・・・・・・ケルベロス』



『ケル・・・・べロス・・・・・』意識の中で復唱していた。


『頭が3つある・・・・・犬のことだよな・・・・・?』


『あぁ!?犬だぁ!!?俺を動物と一緒にすんじゃねぇぞ!俺をクーエリアやグラン、パルドと一緒にすんな。』


『クーエ・・・・・なんだって?』


『なんだっていいだろうが。死にたくねぇだろ?だったら俺を受け入れろ』



次に意識がはっきりしたとき、火球は眼前まで迫っていた。



「う・・・うああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」



眼を覆い、死を覚悟した。




激しい爆発音とともに、噴煙があがり、衝撃波が窓ガラスを突き破る。


「やったんですか・・・・・・?」アトラスという名の男がキースに尋ねる。


「あぁ。」短くそう言い、頷いた。



煙が晴れると同時に、イルダの者たちは自分たちの目を疑った。


そこには、右腕がまるで魔獣のように変化した、無傷のライナが立っていた。



「おい、お前達、覚悟はいいな?」




第1章  第5話    完




どーでしたか!?

なんか長くなりましたね・・・・・(汗)




さーて、ライナに語りかけてきた声はなんだったのか?

変化した右腕はなんなのか?


その全ては第6話で明らかになります!!




ではо(ж>▽<)y ☆



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