今の日本に 国家間の戦争は 起きていないけれど

大なり 小なり いろいろな 戦いの中で 

多くの人が 生きているのだろう、 今もまだ。


こんなにも 豊かな時代になったとしても 

いちばん 大事なのは 心のしあわせであり


授かった 命を大事にしながら 生きる ということは

当然のようでいて むずかしくもあり・・・



なにも できることはなくても 

ただ 人を大事に思うきもち、 

自分の周りで生きている人 全ての人が 

自らの命を 大事に 生きてほしいという 

そんな 素直な思い・・・



国家主義の時代において こんな思いを

堂々と 表現できる その 強さ・・・

自分が信じる 真実だったからこそ 

その強さが 持てたんだろう。



時代が変わっても 伝わっていくものは きっと 真実だけ。



自分が 文字を使って 表現していきたいのなら、

そんな 廃れぬ真実を 表現していきたい。

できるかな? できると 信じよう。




(意訳)

ああ弟よ、あなたのために泣いています。

弟よ、死なないで下さい。

末っ子に生まれたあなただから

親の愛情は(他の兄弟よりも)たくさん受けただろうけど

親は刃物を握らせて

人を殺せと(あなたに)教えましたか?(そんなはずないでしょう。)

人を殺して自分も死ねといって

(あなたを)24歳まで育てたのでしょうか?(そんなはずないでしょう。)




堺の街の商人の

歴史を誇る家の主人で

親の名前を受け継ぐあなたなら

(どうか)死なないで下さい。

旅順の城が陥落するか

陥落しないかなんてどうでもいいのです。

あなたは知らないでしょうが、商人の

家の掟には(人を殺して自分も死ねという項目など)ないのですよ。



弟よ、死なないで下さい。

天皇陛下は戦争に

ご自分は出撃なさらずに

互いに人の血を流し

「獣の道」に死ねなどとは、

それが人の名誉などとは

(天皇陛下は)お心の深いお方だから

そもそもそんなことをお思いになるでしょうか。(そんなはずないでしょう。)



ああ弟よ、戦争なんかで

(どうか)死なないで下さい。

この間の秋にお父様に

先立たれたお母様は

悲しみの中、痛々しくも

我が子を(戦争に)召集され、家を守り

安泰と聞いていた天皇陛下の治める時代なのに

(苦労が重なったせいで)お母様の白髪は増えています。



暖簾(のれん)の陰に伏して泣いている

か弱くて若い新妻を

あなたは忘れたのですか? それとも思っていますか?

10ヵ月も一緒に住まないで別れた

若い女性の心を考えてごらんなさい。

この世であなたは1人ではないのです。

ああ、また誰を頼ったらよいのでしょう。

(とにかく)弟よ、死なないで下さい。