前略 X様


中国は、予想されていたことだが、今度も謝らなかった。
対して小泉首相は「お詫び」の声明を発表し、過去のことに関してまたしても謝罪したが、中国と韓国は何だかんだと理屈を付けてこれを謝罪とは受け取らない。
六十年以上も前の事を今も謝り続け、しかもその心を受け入れてもらえない日本と、現代に起こった、誰が見ても悪い事を他人のせいにして謝罪せず恥じることもない中国。
常識があれば、世界中の誰が見てもどっちがマシかは一目瞭然であろう。


但し中国が謝らない事には、僕個人としてはもう怒る気も起きない。
中国の中原王朝は、その長い歴史の中で何度も重大な失敗をして、何度も周辺民族と衝突したが、国家として外国に対して謝罪した事など無いのではないか。
中国に限らず、戦争もしないで外国に謝罪して貰うというのは非常に難しい話である。
ドイツと日本は世界史の中でも非常に特異な失敗のケースであるように思える。


中国は、何度も外国との戦争に負けて、国土を蹂躙されたり、賠償金を取られたり、領土を取られたりしている。
しかし僕の記憶では国家として明確に謝罪した事は一度もない。
今後も無理であろう。
だから日本政府は町村外相が「謝罪と賠償を要求する」と言っても、実質的な賠償はできても謝罪はできないと一度中国が突っぱねれば、それ以上要求しても無駄だからとばかりさっさと引き下がる。


靖国は確かに関係がある。
しかし、大半の中国人には理解できないかも知れないが、この暴力的なデモの殆どの直接原因は中共の政策、特に教育政策とレベルの低い官僚統治である。
テレビはインターネットの影響云々と言っているが、中国人は元々口コミの早い国民である。
本当に重要な事は、携帯電話が無くても、インターネットが無くても、中国の民衆はいち早く知る。


それはともかく、大陸の中国人の多くは日本を失礼な国だと思っているが、世界の見方はちょっと違う。
中国も韓国も何かというと「我々とアジアの人々の心を傷つけた」と言っているが、実はアジアの他の国の人々に冷ややかに見られているのは日本よりもむしろ中国の方である。
「傷つけた」というのなら、中国も日本人の心を非常に傷つけているのであって、感情論で話をしたらキリがない。
ところが前にも書いたように彼らにとって「歴史問題」とは感情論そのものであり、また感情の強さで言えば日本人は中国人や韓国人にはとても及ばない。


だからこそ、日本は国家として公式には少なくともそういった感情に配慮する政策を続けてきたわけだが、それも限界に来たようだ。
中国側は日本に対して中国の教科書に文句付けても良いですよ、と言ったようだが、中国側もこれまでの政策にやっと限界を感じてくれたのだろう。
ここから日中関係は新しい関係を模索する時期が続くと思われるが、両国関係の新しい未来を切り開く為には、中共一党独裁はいかにも邪魔である。
中国という国自体をひっくり返してしまうような事をせず、如何にして共産党一党独裁を終わらせるかという最大の難関が目前に迫っている。


日本の国益は、この中国の大転換が上手く行くように手伝ってあげることに在る。
その為には中国人の意識が先ず変らなければならない。
だが敵視されている日本にとって、それを直接手伝うことは難しい。
だから日本は中国に影響力のある第三国を巻き込んで、今後壮大な宣伝戦を続けていかねばならない。


小泉首相の村山談話を踏まえた先の演説は、その第一歩として評価できる。
問題はこれに更に時間と金をかけることを日本国民が許してくれるかどうかだろう。
それと日本のマスコミはこの宣伝の意義を理解できない可能性があるので、アテにできない。
僕がもしも現代中国語の名文を書くことができれば、そういうブログで大陸の中国人にも直接訴えかけることができるのだが。


早々