ネゲントロピーとは、非平衡状態にある開放系が、自己組織化した秩序となる時に、その秩序を持続するために消費するエネルギーということができる。秩序とは、生物であったり、渦巻きや台風などの自然現象であったりする。

 

熱力学においては、このエネルギーは熱力学的なエネルギーである。そして作り出す秩序は、物理的ない物質(原子や分子)の構造になる。物理的な物質や構造が自己組織化するわけである。

 

一方で変分自由エネルギー最小化の法則があるように、散逸構造は、目まぐるしく変わる環境(地球環境)に適応するために、秩序を維持するために、短時間で行動を起こすことで、消費する自由エネルギーを最小化しようと試みている。そのためには、物質的な自己組織化は適していない、すなわち目まぐるしく変わる環境に適応するのには向いていない。そこで、物理的な散逸構造の上に、仮想的な散逸構造を作って、そこで推論し、記憶を使って情報を集めて、判断をすればいいわけである。これが神経や脳の出現といえよう。その時に使うのは熱エネルギーではなく、電気エネルギーである。電気エネルギーで仮想的な散逸構造を作って、そこで推論すれば、物理的な散逸構造よりもっと柔軟に、瞬時に新しい散逸構造の仮想モデルを自己組織化できる。

 

人間のように脳の肥大化が実現すると、脳の維持のために自由エネルギーの消費量はかなり増えているのかもしれない。しかしそれ以上に、外的環境の維持を含めたエントロピーを排出している。

 

それに比べて、植物はモノの散逸構造に近く、熱力学に則った自己組織化に頼っているといえる。だから適応のスピードも遅いし、脳のような電気信号を用いた神経回路を持たない。ただこれは程度の問題であって、植物であっても環境に適応するために、葉の向きを変えたり、ある程度の柔軟な推論ができるのは、モノの散逸構造とは異なる性質はあるであろう。

 

このように植物と人間では作り出すネゲントロピーが異なる。植物は、太陽光線と二酸化炭素から光合成をして、有機物を作る。それが化石燃料(石油・石炭・天然ガス)になり、人間の利用する熱力学的な自由エネルギーになる。

 

人間が作り出す主なネゲントロピーは、情報ネゲントロピーである。言葉と文字で世界を秩序化した結果を継承し、次の世代に継承する。その情報の秩序化により、それを学習することで最短距離で、新しく高度な仮想的な秩序を作り出すことができる。

そこには必要以上のエントロピーの排出の上に成り立っていることを忘れてはいけない。

 

仮想的な散逸構造の暴走はまずいということだと思う。