エントロピー最大化原理とは、非平衡状態において、秩序を保ちネゲントロピーの状態を確保するためには、最大限エントロピーを排出しなければならないという原理となる。これは結局全体の系としては、早く熱平衡状態へ持ってゆかれるということであるから、地球環境の中の、生物やモノの散逸構造の存在を考えれば、それらの存在により、できるだけ多くのエントロピーを排出して地球の寿命を短くすることにある。それは、階層構造を作っている散逸構造は、DNAー細胞ー器官ー個人ー共同体ー国家と階層を作っているが、下位の階層(部分系)にて、エントロピー生成最大化原理を追求することで、上位階層の散逸構造(全体系)の寿命は減ることになる。たとえば細胞は常に増殖して、死んだ細胞のエントロピーを排出することで、コピーミスを生み、身体全体の老化や死を生む。腎臓の細胞は生まれてから死ぬまで働き続けるそうだが、そういう細胞ばかりであれば、ネゲントロピーを生むことはできず、エントロピー生成の最大化はできない。細胞はあえて増殖し、死んでエントロピーを排出する、生み出されるネゲントロピーが秩序を保つ力になる。

 

上位階層の寿命にできるだけ影響を受けないようにしたいなら、そもそもエントロピーを多く排出するより、小さな自由エネルギーを入力にして、環境負荷を最小化し、じっくり時間をかけてネゲントロピーを貯めればよい。それは植物のような生物の生き方であり、縄文杉のような生き残り戦略と言える。

 

しかしそれでは、人間のような自由意志を持つまでの、動的なクリエーティブな散逸構造は実現できない。環境の変化に合わせて刹那に行動を決定し、そして実行に移すモデルを考えれば、もっとエントロピーの入出力が激しい、より複雑なモデルでないと、動的に自己組織化するような複雑な構造が必要になる。脳という散逸構造はそのようなモデルであり、エントロピーの入出力を大きくすることで、様々な推論と認識ができるようになり、よって自由エネルギーの変異も最小化できるのである。

 

ただもっと上位階層を考えれば、たとえば生物界という散逸構造を考えると、食物はエントロピー排出を最小化しながらネゲントロピーを生み、動物は植物の作ったネゲントロピーを自由エネルギーとして摂取しながら、大きなエントロピーを排出していると考えれば、結局全体としては、生物界では、食物連鎖により、入力となる自由エネルギーを最小化して、その中でそれ相当ののエントロピーを排出していることになる。

 

このように部分的な散逸構造においては、自由エネルギー原理のフォーカスするものとエントロピー排出にフォーカスするものがある。その相互依存関係によって、両方の原理が両立している。

 

動物、そして人間は、エントロピー排出が顕著であるといえる。入力としては植物や家畜が生むネゲントロピー(自由エネルギー)を大量に消費する。それは自分自身で消費するというより、自身の環境を化石燃料などを用いて変えてしまい、自分の外に秩序を作りネゲントロピーを生む。その過剰なるネゲントロピーより、欲や楽を享受する。

 

人間の作り出すネゲントロピーは、植物のそれと性格が異なると思う。その辺は、別で掘り下げたい。