中国「国債バブル」の悲惨な実態

習近平国家主席の経済失策は、のちのちまで大きな禍根を残すことになるだろう。

中国は、長期停滞はもはや避けられない。

過去30年間は、14億人の巨大な市場が世界の経済成長を牽引したが、それはもう過去の話となった。

習氏が罪深いのは、自国経済のみならず、豊かな市場を荒廃させて世界を低成長に導こうとしていることだ。そのため、いま中国は世界から見放され用としている。

それが如実に表れているのが、中国の「国債バブル」だ。

中国国債の長期金利(10年)は、いま歴史的水準まで下落している。4月下旬には10年物国債は2.2%まで下落して、2000年以降でもっとも低い水準となった。現在は2.3%近辺で推移しているが、マーケットの合理的な水準を下回っているとみられる。

つまり、中国国債の値段は高騰して、バブルの状態にあるわけだ。

歴史的「低金利」が中国経済の病理を表している…

これが、どれほど恐ろしいことか、賢明な読者は気づいているだろうが、つまり、80年代の不動産バブルの崩壊で低迷した日本経済と同様に推移しているのだ。

中国の国民が、経済疲弊から物を買えなくなったため、投資活動が後退。銀行の貸し付ける融資も停滞し、投資先を失ったマネーが安定的に金利を得られる国債に集中しているのだ。

それを裏付けるように、5月の新規人民元建て銀行融資も9500億元(約19兆円)と市場予想(1兆2550億元)を大きく下回った。

金融当局が国債バブルに警告を発しているものの、市場はこれに反応する気配はない。

バブル崩壊後、行き場を失ったマネーが国債市場に集中した、かつての日本を彷彿とさせる光景だ。

実は、10年前まで、中国は長期停滞を招いた日本の先例と同じ轍は踏まないと多くのエコノミストは信じていた。しかし、習近平国家主席がこれほど経済音痴だという大誤算が、いまの状態を作りあげている。

「ドミノ倒し」の中国経済

国債バブルのウラで、中国経済の悪化は止まらない。

5月の主要70都市の新築住宅価格は68都市で前月から下落した。販売不振のせいで平均下落率は2014年10月以来の大きさとなった。

1~5月の不動産投資も前年比10.1%減と1~4月の9.8%減から加速している。

政府は在庫住宅の買い入れや住宅ローン金利の下限撤廃などの措置を打ち出しているが、その効果がいまだに出てこない。

好調だった工業生産にも陰りが見えている。

5月の鉱工業生産は前年比5.6%増と4月の6.7%増から減速している。

電気自動車(EV)などミクロベースでは「爆発的な成長」があったが、マクロベースの不調(不動産バブルの崩壊)が足を引っ張り、息切れ状態になっているのだろう。

激しいダンピング競争

中国人の財布の紐もますます硬くなっている。

5月末から実施されていた大型ネット通販セール「618」はセール期間を延長したが、盛り上がりに欠ける結果に終わった。一部の安売り業者が、なんとか需要を掘り起こそうとコーヒーから自動車、衣料品に至るまであらゆるものを値下げしており、価格競争が一層激化している(6月11日付ロイター)。

中国も「日本型デフレ」の病に罹ってしまったと言えよう。

「泣き面に蜂」ではないが、異常気象も中国経済にとって大きなマイナスだ。

昨年と同様、北部で猛暑・干ばつ、南部で大雨・洪水が続いており、中国の国土は荒れ果てるばかりだ。

だが、それ以上に心配なのは、将来を悲観した中国の若者たちの心の荒廃だ。日本の長期停滞は、失われた世代を生んだが、中国でもやはり同じことが起きようとている